地域防災 活火山・開聞岳 現状は

指宿市の開聞岳です。「薩摩富士」とも呼ばれ親しまれている開聞岳ですが、今からおよそ1200年前、大規模な噴火があったことを皆さん、ご存知でしょうか。
その1200年前の平安時代、日本列島では大規模な地震が相次ぎました。
しかし、地震や津波だけではありませんでした。富士山などの火山も相次いで噴火したんです。そしてそのうちのひとつが、開聞岳でした。
活火山「開聞岳」と共に暮らす指宿市。地域の防災について、現状と課題を取材しました。
標高924メートル。円錐形の美しい姿から「薩摩富士」とも呼ばれる開聞岳。

指宿市のシンボルとして親しまれていますが・・・

「今から1200年ほど前には大規模な噴火が起き、集落一帯は火山灰で埋め尽くされたといいます」

現在は穏やかな姿の開聞岳。しかし、過去に大噴火した歴史がある、「活火山」なのです。


平安時代の歴史書「日本三代実録」。
9世紀後半、日本列島で発生した数多くの地震や火山噴火の様子が生々しく記されています。


この時代、各地では1200年後の現代に起きた東日本大震災や、阪神・淡路大震災などに似た地震が発生していました。

その中にある・・874年の開聞岳の大噴火。
「(3月25日の夜)開聞の神が鎮座する山頂に炎が立ち上り、真っ赤に焼けた。噴煙は、天を覆って、灰や砂が雨のように降った。川の水は、大量の砂で黒く濁り、無数の魚や亀が死んだ」

噴火の規模は、桜島1回の爆発の1万倍にあたり、桜島から出るおよそ10年分のマグマが、火山礫として指宿市内に降り注いだといいます。

(指宿市考古博物館時遊館COCCOはしむれ西牟田瑛子さん)
「こちらが、平安時代の開聞岳の噴火の火山災害の様子を遺跡から知ることができるコーナーです」


3年前、指宿市の発掘調査で見つかった、噴火当時の史料。

(西牟田さん)
「こちらは開聞岳の火山灰と土石流が家を丸々一軒埋めてしまった後が見つかり、そこから当時の家財道具がそのまま出てきたというものです」
「開聞岳の火山灰で市内の南半分は埋もれてしまったというふうに、今のところ発掘の結果からわかっています」

 

噴火からおよそ1200年。登山客に、活火山としての認識を聞いてみると・・

(登山客)
「あ、活火山なんですね~そんな感覚ないですね。硫黄も出てないし、兆候がない山ですから。霧島とかであればね、ガスが出てるってイメージがあるのでなんとなく分かるけど」

一方、地元住民は・・
(活火山だということはご存知?)
「子供のころ聞かされてはいたんですけど/詳しいことは分からない」
(もし噴火したら?)
「現実的にはわいてこないです・・何も考えたことないですね、そういうことは」

 

噴火の可能性については現実味がないと話す住民たち。指宿市は、現在、開聞岳が噴火した場合に備え地域防災計画や
ハザードマップを作るなどの防災対策を行っていますが、より住民の意識を高めるために、今後、防災訓練を実施していきたいとしています。

 

(指宿市防災・安全対策推進嘱託員福﨑純孝さん)
「あえて火山という危険な山とは考えていませんけど、やはり、気象庁の活火山の1つに指定されている生きた山ですので、市としては
あらゆる面を想定した中で、安全対策だけは立てとかなければいけないなという形で動いている」

しかし、火山学の専門家は、開聞岳だけでなく指宿市全域での噴火の可能性を想定しなければならないと話します。

(鹿児島大学・井村隆介准教授)
「1200年経ってるから(噴火は)ないんだろうと思っている方が多いと思うんですが、実は指宿エリアというのは開聞岳だけではなくて、池田湖とか山川とか、うなぎ池もですが、火山の集合なんですね」


開聞岳の周りに広がる池田湖やうなぎ池。実はこれらも縄文時代に次々に噴火していて、指宿市は市内全域が、「火山帯」なのです。

(井村隆介准教授)
「どこから噴火が起こってもおかしくない、小さな噴火は前兆が必ずしも捉えられるとは限らないということですから、今すぐということはないんですけど、
やはり自分たちの地域の成り立ちを知っていただいて、大丈夫なんだではなくて、”かもしれない”というのをいつも考えていただきたいと思います」

美しい景観に加え温泉や農作物など火山の恩恵を大きく受けている指宿市。
一方で地域で過去何が起きたのかその歴史も知る必要があります。

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