熊本地震5年 長期避難の備え
災害後の避難生活で命を落とす人が出ないようにするために、鹿児島でも熊本地震を教訓に対策が進みましたが、課題も残されています。牛島記者の報告です。
2016年の熊本地震では4月14日と16日に最大震度7の地震が2回発生。2回目の地震の翌日には熊本県内では855か所の避難所に18万人余りが避難しました。一部で避難が長期化する中、「災害関連死」の人数は226人と直接死の4.5倍に上っていて大きな課題となっています。
災害関連死を要因別で見ると「地震のショック・余震への恐怖による負担」で100人で最も多く、次いで「避難所等の生活の負担」「医療機関の機能停止等による初期治療の遅れ」となっています。認定された人のおよそ8割は70代以上の高齢者でそのうちおよそ9割には持病や病歴がありました。
(鹿児島大学 井村隆介准教授)「災害関連死は地震の直後には生きていた人がその後の対応が悪くて亡くなったっていうこと。ある意味で行政や地域、そういう災害に備えておかなければいけないところにとって、間に合わなかった部分。それをやっぱりもっとちゃんと考えないと駄目と思う。」
持病のある高齢者・障害者ら災害弱者の避難も課題となっただけでなく、多くの人がエコノミークラス症候群のリスクを知りながらも避難所を避けて車中泊を選ぶなど、避難所のあり方についても様々な課題を突きつけた熊本地震。
鹿児島市はその教訓を踏まえ、2018年4月に長期避難を想定した避難所運営マニュアルを作成。運営の中心に住民を据え、避難者のニーズの吸い上げや災害弱者のいち早い把握につなげようとしています。
(鹿児島市危機管理課 児玉博史課長)「地域の知っている人がいることで自分たちの声を届けることができる安心感を持って、レイアウトなどにもみなさんの意見を盛り込みながら快適な環境に持っていくのが長期的な避難生活を送るために非常に大事」
鹿児島市は市内88か所の指定避難所の備蓄品を見直し、熊本地震の長期避難者から要望が多かった石鹸、歯ブラシトイレットペーパーなどの日用品を拡充し、生活環境の向上を図りました。
また、支援・配慮が必要な災害弱者の避難先となる福祉避難所を、市が指定する8か所のほか、民間の施設を60か所から74か所に増やすなど、受け入れ体制を強化してきました。
しかし、新たな避難所運営マニュアルや福祉避難所が実際に活用された例はまだなく、その周知や経験値の向上など課題はあるといいます。
(鹿児島市地域福祉課 山内博之主査)「実際に福祉避難所として運用したことはないが、毎年(全国で)起きている災害をもとに見えてきた課題もある。(市として)そういった課題にも取り組んでいきたい。」
鹿児島でも、いつどこでも起こりうる直下型地震。直接、命を落とさないために家具の固定などの備えをひとりひとりが平時から進めておくことが必要ですが、その後の避難生活も考え、数日分の飲料水や食品、それに身分証、常用の薬などをすぐに持ち出せるよう準備しておくことも大切になります。
そして、行政や自治会なども避難所の運営や災害弱者への対応などをどうするのか、事前に考えておく必要があると専門家は指摘します。
(鹿児島大学 井村隆介准教授)「訓練でやっていないことはできない。福祉避難所や災害弱者をいかにマスになった避難所で見つけていくかがとても大事なことになる。」「東北よりもずっと早く動いたと思う。それでも200人を超える人の命が奪われてしまった。何が足りなかったのか、もっと真剣に考えないといけない」