【シリーズ関東大震災100年④】都市で拡大する津波リスク(2023年8月26日放送)

来週9月1日防災の日は、国内史上最悪の関東大震災から100年の節目です。シリーズ特集4回目です。
大震災では、揺れや火災以外に津波でも多くの人命が失われました。埋め立てを始め都市開発が進む中、高まる津波災害のリスクに焦点を当てます。

【シリーズ関東大震災100年】記事一覧


(鹿児島大学 井村隆介准教授)「多くの人が『関東地震、東京の火事の地震』と思っていると思うが、実際には地震による被害のオンパレード。海底で起きた地震では津波の可能性があるということをきちんと思い起こして欲しい」

10万5000人余りが死亡した関東大震災。死亡原因の大半が火災と、建物倒壊などによる圧死でしたが、津波でも300人前後の死者が出たとみられています。

静岡県熱海市です。激しい揺れの直後、12メートルもの津波に多くの人たちが飲み込まれました。死者・行方不明者およそ100人の大半が津波の犠牲者とみられています。

神奈川県・江の島。夏は海水浴客らでにぎわうこの周辺も7メートルもの津波で、行楽客らあわせて150人が津波に飲み込まれたとされています。

津波でも多くの死者が出た大震災から100年。埋め立てが進み、いまやタワーマンションが立ち並ぶ、ウォーターフロント、東京・江東区。高潮や津波から都市を守る最前線・辰巳水門です。来るべき地震で東京都が想定する津波は最大2.6メートル。水門や防潮堤で浸水は防げるとしています。
地震地質学が専門の鹿児島大学・井村隆介准教授は…

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「この水門自体は耐震補強がずいぶんされている。ただ水門が壊れなくても防潮堤・防波堤がどこかで崩れてしまえば、もともとゼロメートル地帯があるようなところですから、津波の高さが低かったとしても、もし一部でも(防潮堤が)壊れていればそこから水が入って低いところに集まって、被害を受ける可能性がある」

都心のウィークポイントのひとつが、大量の地下水のくみ上げが原因で、標高が満潮の際の海の高さより低い・いわゆる海抜ゼロメートル地帯です。

状況が悪化したのは大震災以降高度成長期にかけて。浸水リスクが高いゼロメートル地帯は首都圏で116平方キロにも及び、176万人が暮らしています。

本当に津波のリスクはないのか…。関西大学の河田惠昭特別任命教授です。東京湾内では高い津波自体は起こりにくいとしながらも、アメリカでの高潮被害を例に、ひとたび水がゼロメートル地帯に入れば地下鉄や地下街の被害は甚大と指摘します。

(関西大学 河田惠昭特別任命教授(防災・減災))「道路上に洪水・津波・高潮があふれるということがあったら、地下空間は全部水没する。ハリケーン・サンディでニューヨークを高潮が襲った。メトロが出入り口全部を閉じたつもりだった。換気口から残って、そこから水が入った」

首都圏の地下鉄も洪水や高潮の浸水対策は進めていますが、突然起きる地震では対応に限界があると河田特別任命教授は語ります。

(関西大学 河田惠昭特別任命教授)「東京メトロは防水扉を持っている。いざというとき閉めるとなっているが、地下鉄が動いているときは閉められない。用意していても、準備できるやつとできないやつがある。大丈夫という保証はない」

一方、鹿児島。低地を埋め立て、拡大した都市ならではのリスクは桜島が目の前の鹿児島市にも立ちふさがります。

鹿児島湾直下の地震で3.4メートル。桜島の海底噴火で最大12.8メートルもの津波が想定されており、最悪、分単位・秒単位で津波が襲う危険性があります。

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「ちょうど照国神社の前から3号線と10号線が入れ替わるところ。そのあたりまでが縄文時代の海岸線だったところ。それより海側はそれ以降に陸になった。(海側の埋め立て地は)大きな地震や噴火を経験していない」

井村准教授が指摘する津波リスク、30年前の8・6豪雨で浸水した鹿児島中央駅まえでは。

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「当時なかったものとしてはこの地下通路。新幹線開業に合わせて作られた。もしここが浸水してしまったら、ここに水が流れ込む」

県と鹿児島市が管理する地下通路。大雨の場合は甲突川の水位を見ながら、防水板を引き出して対応するとしていますが、いきなり発生する津波への対応は困難です。

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「甲突川が氾濫したときはハザードマップでここも浸水想定のエリアに色ついている場所。地下空間に水が流れ込んでくる。階段が滝になる。そこを上に上がれるかどうかということを想像して欲しい」

関東大震災から学ぶ。井村准教授はこの100年で大きく変わったまち、そして社会のありようを念頭に、今災害が起きた時どのようなリスクがありうるのか。一人ひとりが考えることこそ、鹿児島でも重要と訴えます。

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「当然人口も全然違うし、スマホだとかどれだけ電気に頼っているかとか、いろんな状況が違う。大正の関東大震災のことを知ることはとても大事なことだが、同じことが今後起こるとは思わないほうがいい。関東大震災を知って、今の時代にマッチした行動を自分自身で考えて行わなければいけない」

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