県本土で年間雨量最多 肝付町の災害リスク

MBCでは災害時の情報発信などの防災面で、市町村と連携を強めるため、すべての自治体との間で防災協定を結ぶ取り組みを進めています。
MBCと防災協定を最初に結んだ肝付町の災害リスクについて、下山記者の報告です。


大隅半島の東に位置する肝付町。7800世帯1万4000人あまりが暮らしています。
内之浦宇宙空間観測所があり、去年も観測ロケットの打ち上げに成功しました。
太平洋に面した内之浦地区と内陸の高山地区を国見山など標高900メートル級の山が連なる肝属山地が隔てています。

(下山記者)「がけ崩れのあとをコンクリートで固めてありますが、山沿いではこういった場所が数多く見られます。過去の災害の大きさを物語っています」

地質のほとんどを花こう岩が占めている肝付町。
花こう岩が風化した「まさ土」は崩れやすく、これまでにも、たびたび土砂災害を引き起こしてきました。

(鹿児島大学 井村隆介准教授)「『まさ土』という細かく砕けてしまう地質で、土砂災害が起こりやすい、さらに急な山があり雨が多いというリスクを抱える場所。土砂災害警戒区域などで(過去の)災害は起こっているので、そういう意味で「寝耳に水」とか「想定外」の災害が起こっているわけではない」


肝付町には気象庁の観測点が高山地区側の前田と内之浦にあります。東からの湿った風が肝属山地に当たり、雨雲が発達しやすい地形のため、海側の内之浦の年間降水量は3000ミリ以上。県本土の観測点で、最も雨の多い地域です。

2012年6月の大雨では、1時間に80ミリを超える猛烈な雨を観測。
内之浦では、平年6月1か月に降る雨のおよそ7割に相当する371ミリの雨が、1日で降りました。

この猛烈な雨で5棟が全壊、14棟が床下浸水の被害を受け、国道など数か所で、土砂崩れにより道路が寸断。

(住民)「いやすごいのなんのって。後ろも前も身動きが取れない。後ろを見たら崩れてきていた」

7つの地区で一時350人が孤立しました。


(肝付町 吉永弘志防災管理監)「大雨警報が出るような時に一番見にくるのがここです。水位計はずっとずっとみている、気象庁のホームページと」

肝付町の吉永弘志防災管理監(62)です。
大隅肝付地区消防組合を定年退職後、現在、町の防災業務を担っています。

(吉永防災管理監)「(消防は)台風や大雨災害時に現場には出向きますけれども、防災に特化した専門的な業務はなかった。こういう現場を見て町の現状を把握している」

この日は9年前の土砂災害で被害を受けた集落などを回り、危険か所を確認しました。

(吉永防災管理監)「この辺も土砂災害警戒区域。近くに家がないかとか、住民がどこに避難するか(確認する)。場合によってはお友達とか親戚の家に避難する住民もいるので」

(地元住民)「台風の前には雨戸を閉めに来て(子どもたちが)、親を避難させる。そうでないと(土砂で道路が)通れなくなった経験があるから、いつどこが崩れるかわからないから怖い」


県本土で、最も雨の降る肝付町。
町の北側は一級河川の肝属川が流れ、大雨の時には氾濫や浸水のリスクがあるほか、南海トラフの巨大地震の際には最大8.4メートルの津波が想定されています。

吉永さんは、「自分の地域の特徴を知り、災害時にとるべき行動についてイメージしておくことが重要」と話し、早めの避難を訴えます。

(吉永防災管理監)「日常的に雨が降らない時でも、台風が来ない時期でも、(気象庁ホームページの)どこにどういう情報があるか練習をかねて毎日見るようにしている。自分から情報をつかみに行くことを一番心掛けている。肝付町全体の防災知識や防災力を上げたい」


鹿児島大学の井村隆介准教授は、気象台や自治体などからの情報をどう行動に結び付けるかは、最終的には住民一人一人の意識にかかっていると話します。


(井村准教授)「避難をする『防災スイッチ』は自分自身が経験とかこれまで学んできたことをもとにスイッチを入れることになるかと思います。備えることとして一番重要なのは自分が住んでいる場所をよく知るという。災害時に臨機応変に自分で考えて行動することが大事だと思います」

自分はいつ、どんな時に防災スイッチをいれるのか。災害が起こる前に、普段から意識し考えておくことが必要です。

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