『記録的大雨、私は』薩摩川内市~医療器具も使い排水 クリニックの院長~

『記録的大雨、私は』薩摩川内市~医療器具も使い排水 クリニックの院長~

CASE2.医療器具も使い排水

鹿児島県北部を襲った記録的な大雨の経験者の声から教訓を考えるシリーズ「記録的大雨、私は」。今回は、中心部を流れる川が氾濫した薩摩川内市で、浸水被害を受けたクリニックを取材しました。

(久留医院 久留敏弘院長)「いつ通常診療に復帰できるだろうと、それが一番心配だった。新型コロナワクチンの予約もいっぱい受けていたので、今週1週間(接種が)続くのに復帰できなければどうしよう」

薩摩川内市東向田町にある久留医院の久留敏弘院長(63)です。久留医院はJR川内駅近くの中心部の一角でおよそ70年にわたって地域の医療を支えてきました。しかし、今月10日周辺の様子は一変しました。

前夜から降り続いた記録的な大雨で、市街地を流れる春田川が氾濫。川内駅周辺のおよそ400棟が浸水し、車が相次いで立ち往生しました。

久留医院でもピーク時にはおよそ50センチの高さまで浸水。カルテなどが浸かりました。スタッフらは雑巾やほうきを使って水のかきだし作業に追われました。

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レントゲン室など精密機械も水に浸かり、古い内視鏡のポンプを使って排水。およそ20人のスタッフ総出で片付けを進め、12日から通常診療を再開しました。

(久留院長)「(レントゲン室が)全部水に浸かっていた。幅が狭いので(小さいカップで)手作業でやったのと、内視鏡の吸引機を使ってこの中にチューブを入れて吸引した。とっさに思いついたのはそのぐらいで。なんとか復旧できた」

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浸水当日は6人が新型コロナワクチンの接種予定でしたが、1週間延期されました。発熱外来用の診療室も水に浸かり、久留院長は新型コロナ対策を想定した医療体制が維持できるか不安を感じたと話します。

『記録的大雨、私は』薩摩川内市~医療器具も使い排水 クリニックの院長~

(久留院長)「新型コロナの抗原検査をここでやっていた。入口が一か所だと発熱患者を車で診療しなければいけない。ちょっと手間が大変になる。ここを確保できなければ、診療検査医療機関としては継続するのは難しいかな。ほかの手立てを考えないといけないとその時は思った」

川内地区の防災マップでは、久留医院のある東向田町一帯は50センチから3メートル未満の浸水が想定されています。医院ではこれまでも大雨による浸水被害は経験していますが、久留院長は「油断があった」と話します。

(久留院長)「自然災害の怖さを思い知らされた。自分が考えているより、その(想定を)超えたことが起こり得る。電気が来なければ検査はできない。CTやMRIも動かない。電力会社と連携して復旧を頑張ってもらう。(そうした連携も)事前にやっておかないといけない」

平常時からの土のうの準備など、防災を意識した病院づくりの大切さを痛感したと話す久留院長。今後は、より大きな被害も想定しなければならないと危機感を強めています。

(久留院長)「災害に対する考えを、もう少し身近なものとして考えないと。いつ自分たちが(被害にあうか)想定しておくべき。それに対する準備をしっかりしておくべき」

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