特集のテーマは「SDGs」です。国連が定めた持続可能な開発目標「SUSTAINABLEDEVELOPMENTGOALS」の頭文字を取ったもので、2030年まで達成を目指す国際的な目標として「(1)貧困をなくそう」や「(4)質の高い教育をみんなに」など17項目が挙げられています。
TBS系列では来月5日までを「地球を笑顔にするWEEK」として様々な番組でSDGsをテーマに放送活動を行っていて、ニューズナウでも29日からシリーズで鹿児島県内の取り組みを紹介します。
1回目の29日、取り上げるのは14番目の目標「海の豊かさを守ろう」に関する取り組みです。
旬の味覚として人気のウニ。しかし、一方で大量発生による海の環境悪化も課題となっています。「厄介者」にもなっているウニを活用して海を守ろうという阿久根市の取り組みを久保記者が取材しました。
阿久根の海で3月中旬から5月中旬にかけて旬を迎えるムラサキウニ。例年、市内の飲食店などで「うに丼祭り」も開かれるなど、地元を代表する人気の海産物ではありますが、ある問題も引き起こしています。
(北さつま漁協 猿楽敦理事)「昔はもうものすごくちゃんと海藻だらけという生えていたところなんですけど、今見てわかる通り・・・磯焼けですね」
海で藻場と呼ばれる海藻の群落がなくなり、育ったなくなってしまう「磯焼け」。発生すると生物が暮らしにくい環境となり、漁業にも打撃が出ます。
阿久根市の海で撮影された映像です。2011年の映像では人の背丈より高い海藻がぎっしりと生えていますが、去年の同じ場所の映像では、岩が丸裸の状態で海藻はほとんどありません。磯焼けは、温暖化など複合的な要因によって起きるといわれていますが、その要因の一つと見られているのが、大量の海藻を食べるウニの大量発生です。
(猿楽さん)「我々はできることを考えたときに、海藻をもっと増やそうということでいうと、一番直接海藻を食べるウニのものすごくたくさん繁殖しすぎたところは、駆除していこうということですね」
北さつま漁協では、20年ほど前から増えすぎたウニを駆除する取り組みを行っていて、その成果も少しずつ出てきているといいます。
しかし、大きな課題があります。それは駆除したウニの処理です。藻場がない場所で育ったウニは身が少なく、売り物にならないのです。
(猿楽さん)「当然食べていないですから、細くなっていきますよね。ほとんど商品価値はない」
そこで注目されているのが、これまでは捨てるしかなかったウニの殻を活用しようという取り組みです。
(尾塚水産 尾塚ヱイ子社長)「身を食べるとかそういう印象しかなかったんですよね。食べるだけじゃなくて、いろんなものに使えるし、役立つ」
阿久根市の尾塚水産では、ウニの身を使った加工品を作ってきましたが、近年、殻を活用した加工品の開発にも取り組んでいます。
「この窯で1100度で焼いて放置すると、こうやってこういう風に細かくなるんですよ」
ウニ殻を高温で焼いて粉状にした「ウニ殻カルシウム」です。以前は廃棄に悩んていたウニの殻を良質なカルシウムとして食品などに活用しようというのです。
(尾塚水産 技術顧問(農学博士) 藤本滋生さん)「主成分は炭酸カルシウムというんですけれども、ウニの特徴はマグネシウムとかカリウムとかそういうミネラルバランスがいいということですね」
「ウニ殻カルシウム」は食品の味の邪魔をしないことなどからクッキーやビスケット、ウニ味噌などの食品に加工されています。
また、きめの細かさをいかして石鹸なども開発。地元の道の駅やオンラインショップなどで販売しています。
さらに、子どもたちに海の問題について楽しみながら考えてもらおうと、ウニ殻を使ったアート作り体験なども行っています。
(尾塚水産 技術顧問(農学博士) 藤本滋生さん)「これを作ったりすることによって海の環境を守るんだと地球の温暖化防止にまで思いを巡らせてほしい」
また最近は、駆除したウニをまるごと焙煎し、ニワトリのエサにする取り組みも始めました。殻に含まれる良質なカルシウムと小さな身に含まれるタンパク質により、栄養価の高い飼料になると期待されています。
(尾塚水産 尾塚エイ子さん)「すごい可能性がいっぱいありますね。海の仕事をさせてもらっているから大切にしていきたい」
海の「厄介者」を活用して環境の改善につなげたい。阿久根市で模索が続けられています。