国連が定めた持続可能な開発目標=SDGsの13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」をふまえ、地球温暖化防止について特集しています。
今回は「小水力発電」です。「水力発電」と聞くと、大きなダムをイメージする人が多いと思いますが、より規模の小さい川や用水路の水を利用するのが「小水力発電」です。発電の中で二酸化炭素排出が最も少ないクリーンエネルギーとして注目される小水力発電の現場を取材しました。
鹿児島県日置市吹上町に3年前に完成した「永吉川水力発電所」。小屋のように見えるこの建物が、発電所です。日置市や14の企業などが出資して建設しました。開発を担当した、出資企業のひとつ「太陽ガス」の及川斉志さんに案内してもらいました。
小水力発電は、川に設置した取水口からとった水を、高低差のあるパイプに流します。水の勢いで水車が回転することで電気がつくられ、使った水は再び川に戻る仕組みです。
最大出力は44.5キロワット。1年間で、一般家庭70世帯分の電力を供給できます。小水力のメリットは、天気や火山灰などに左右される太陽光に比べ、昼夜を問わず安定して発電できることだといいます。
(及川さん)「自然エネルギーの中でも、太陽光や風力はすごく変動する。小水力は川の水が一定だったらほぼ一定で発電してくれるので、すごく安定した電気」
永吉川発電所の総工費はおよそ1億円で、太陽光発電と比べると初期投資は数倍かかります。一方、システムの寿命は太陽光発電は20年ほどですが、小水力はおよそ100年と、長期的に見れば採算性に優れているといわれています。
また、資源エネルギー庁によりますと、水力発電は、すべての発電方法の中でもっとも二酸化炭素排出量が少なく、環境保全の面でも注目されています。県も「太陽光に比べ安定的な発電方法」として導入に力を入れていて、現在、県内にはおよそ40か所。しかし普及はまだまだこれからです。
再生可能エネルギーは太陽光が75%を占めているのに対し、小水力発電はわずか0.4%と県が掲げる目標値の半分ほどに留まっています。
その背景について、再生可能エネルギーに詳しい鹿児島大学の門久義名誉教授は、生み出した電気を送る送電システムに、問題があると指摘します。
発電した電力は、送配電網を通じて各家庭や工場などに送られます。しかし、送配電網の容量は決まっていて、現在、太陽光の普及などによってすでに空き容量がなく、事業を見合わせるケースが相次いでいるのです。門名誉教授は、小水力の普及には国や県の支援が必要と話します。
(門 名誉教授 )「いちばん可能性が高いのは、新しい鉄塔を作る。そうすると再エネがどんどん普及していく可能性はある。国も新しい鉄塔を作らないといけないという認識はしているようだが、どのぐらい予算をかけてやってくれるのかは、まだ見通しが立たない」
及川さんらは現在、地元企業4社で、新しい小水力発電所を建設しています。国の調査では、川の総延長が全国6位の鹿児島。及川さんは、資源が豊富な鹿児島の地形を活かした小水力発電で、エネルギーの「地産地消」を目指したいと話します。
(及川さん)「CO2削減をしてくれるので、温暖化対策、持続可能なエネルギー社会を構築してくれる、ひとつの重要な電源だと思います。
地域の人たちが自分たちの手で発電所を作り、災害時にも使えますよと。エネルギーを地産して、地域の方々に使ってもらう、地産地消ですね」
環境にやさしい小水力発電の可能性を信じて。普及に向けた取り組みが続いています。