東日本大震災から13年 志布志湾沿岸の防災設備を専門家が視察「避難の仕方や防災のあり方考えて」
東日本大震災から13年、鹿児島県内では30年以内に70~80%の確率で起こるとされる南海トラフ巨大地震に備えて、ハード面の整備が進んでいます。一方で、専門家は「自然は想定を超えてくる」と警鐘を鳴らし、一人一人が備えることが大切と訴えます。
(井村准教授)「東日本大震災で津波が越えてくる映像とフラッシュバックする」
地震地質学が専門の鹿児島大学・井村隆介准教授です。東日本大震災を受け、現在も避難施設の整備が続けられている志布志湾沿岸を一緒に歩きました。
(井村准教授)「6メートル超の津波がやってくると津波でやられてしまう」
死者・行方不明者1万8420人。東日本大震災では、国内で観測史上最大となるマグニチュード9を観測。高さ10メートル以上の巨大津波が発生し、東北・関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害が出ました。
これまでに発生した地震などをもとに県が想定している地震です。鹿児島湾直下や県西部直下、トカラ列島や奄美群島太平洋沖など12の地震があります。
鹿児島を含む西日本で対応が迫られる南海トラフ巨大地震では、県内で最大震度6強、屋久島で12メートル、大隅半島の太平洋側で最大およそ8.5メートルの津波が想定されています。
志布志湾に面した東串良町です。南海トラフ地震では最大7.3メートルの津波が想定されています。去年7月、標高12メートルにある役場の隣に、およそ2億9000万円かけて防災庁舎を整備しました。
1階には水や非常食、簡易トイレなどを保管。2階は対策本部室で、関係機関と情報を共有し、町民に避難情報などを発信します。
井村准教授は「施設などのハードに加え、訓練などのソフトにも注力すべき」と話します。
(井村准教授)「確実に進んでいるが、防災はどこまでいけば100%絶対に全員の命を守れるかがない。東串良町が被害受けると大崎町、志布志市、肝付町と被害を受けている。それを想定し(連携した)訓練をするべき」
(東串良町総務課 内村大輔係長)「どのように情報手段を取得すべきか、取得できないときにどう動くべきか、想定しながら体制を構築していかなければならない」
一方、こちらは志布志市です。去年9月、海岸近くの押切西集落に3500万円あまりをかけて津波避難所を整備しました。
集落には、南海トラフ地震発生から36分後に最大7メートルの津波が到達すると想定されています。避難所の標高は8.3メートルと想定される津波より高い場所にありますが、横を通る国道側から見ると、その高さは地面とほとんど変わりません。
(集落住民)「避難タワーができるものだと思っていたから、この盛土では心配でどうしようもない」
(集落住民)「スロープで国道側に渡れるように作ってほしいと、市の説明会で要望伝えた」
集落は安楽川と菱田川に挟まれて、海岸だけではなく、川を遡上する津波が堤防を越えるリスクがあるほか、渋滞などを防ぐために徒歩避難が原則です。1キロほど離れた高台まで避難が難しい人のために、今回、避難所が整備されました。
市は「県の想定に基づいて整備しさらに高くする計画はない」として、「今後は住民から要望があった備蓄倉庫の設置などを計画している」としています。
(井村准教授)「避難所が絶対に安全な場所ではない。時間に余裕があれば、さらに高台に移れるように国道に出て、向こうの高台に避難できるように、工夫しておくことが必要」
地元の中学生は家族と避難場所を確認するなど、日頃から地震に備えていると言います。
(志布志市の中学生)「家具を固定したり、ハザードマップを確認したり、地域の人たちと逃げる場所を確認することが一番大切」
(井村准教授)「自分の命を守ることが大事。みんなで遊んでて今(地震が)起こるかもしれない。その時に命を守ることを頑張って取り組んでください」
(中学生)「ありがとうございました」
(井村准教授)「今ある想定を簡単に超えてくるのが自然だということを知っていてほしい。ここにいると防災マップもないし、避難所がどこか一般の人は知らない。(いざというときに)自分で判断しないといけない。」
「東日本大震災から13年ということを考えて、もう一度身のまわりの避難の仕方や防災のあり方を考えてほしい」
東日本大震災から13年。いざという時に、自分や大切な人の命を守るために「今できること」は何なのか。教訓を忘れずに一人一人が考えることが大切です。