震災12年 専門家が見た鹿児島の現状「南海トラフ以外にも目を向けるべき」

死者・行方不明者1万8000人余りが出た東日本大震災からまもなく12年。鹿児島県内でも備えが進むのが、南海トラフ巨大地震です。東海・南海・そして日向灘まで連動するとされる地震では、最悪マグニチュード9.1、死者32万人が想定されています。
一方で、志布志湾沿岸を視察した専門家は「鹿児島では南海トラフ以外の地震にも目を向けるべき」と警鐘を鳴らします。


地震予知連絡会会長/名古屋大学・山岡耕春教授
「南海トラフ地震よりも南で発生する海溝型地震もあるかもしれない。南海トラフやっていればいいだろうみたいに思うのは九州の南・鹿児島ではだめ

鹿児島県の薩摩川内市。全校児童503人の亀山小学校です。震災から12年を前に、今月6日、地震訓練がありました。合図のチャイムとともに、一斉に机の下に隠れる6年2組の児童。揺れを伝える1分間、身を守り続けます。

訓練を重ねてきたこの子たちを始め、この春卒業する6年生は、震災が起きた年度に生まれた子どもたちです。そのあと、市の防災担当者が語りかけました。

市防災安全課・山元勉課長代理
「東日本大震災から12年、そしていま、トルコでは5万人の方が亡くなる大地震が発生しました。いざ地震が起きたときに、この訓練を思い出してください」

鶴堀春真さん。震災の4日後に生まれました。父親が災害現場に向かう自衛隊員で、熊本地震を体験した祖母からの話も聞き、災害を身近に感じてきました。

鶴堀春真さん
「大雨とかでお父さんがたまに出張に行ったとき、とても心配になる。地震とかが起きたら避難訓練通りにやりたい」

死者・行方不明者1万8423人。国内観測史上最大となるマグニチュード9の東日本大震災を受け、鹿児島も含め西日本で対応が迫られる南海トラフ巨大地震。最大でマグニチュード9.1死者は全国で32万人。鹿児島でも2000人が想定されています。

県内でこの間、地道に備えを進めてきたのが、南海トラフに最も近い志布志湾周辺の4つの市と町です。いずれも地震・津波対策の特別強化地域に指定されています。

最も南の肝付町、内之浦の小野(この)地区です。人口120人のうち、41人が要配慮者。港と急傾斜地崩壊危険箇所の裏山に囲まれていることから、気象庁が巨大地震への警戒を呼びかける臨時情報を出した場合、町は要配慮者に1週間の事前避難を促す「高齢者等避難」を発令します。

住民は…
「やっぱりこわい、自然のことで。いつ起こるかわからない」
「心配。裏が山なので土砂崩れとか起きたら」
「(事前避難は)病院に行ったりするから(大変)」

町では、ほかにも高さ13メートルの津波避難タワーを建設するなど対策を進めてきました。

肝付町・吉永弘志防災管理監
防災計画にパーフェクトは無いと思っている。これからも試行錯誤しながら、携わっていきたい」

震災12年を前に先月、志布志湾沿岸の備えを研究者が視察しました。地震学が専門の名古屋大学・山岡耕春教授です。地震予知連絡会の会長で、気象庁の南海トラフ地震の評価検討会・委員も務め、「国難」ともいわれる巨大地震への対策をリードするひとりです。

 

まず訪ねたのは、全校児童61人の大崎町・大丸小学校です。震災後、国が進めた実践的防災教育のモデル校として、避難訓練を繰り返すとともに緊急の際の屋上への階段を整備しています。

大崎町・千歳史郎副町長
「(地震があれば)すぐ走ってここから1.5キロある高さ25メートル(の高台)。そこまで走って10分ぐらい。ここ(学校の屋上)は最後の本当に逃げ遅れた人の(避難場所)」

山岡耕春教授
「非常にいい。いろいろ選択肢を用意しておくと、救える命を少しでも増やすということになる」

次に訪れたのは東串良町・防災センターです。海に近く、対応の前進基地としての機能を持つとともに、万が一の時には1次避難場所として避難することができます。

東串良町総務課・内村大輔危機管理係長
「防災センターに関しては自衛隊・消防隊を受け入れたり、物資の搬送拠点としてサブ機能を持っている」

さらに東串良町では、本庁舎の隣にことし6月の運用開始を目指し防災庁舎を建設中です。

東串良町・宮原順町長
「町民のために、ひとりでも命を無くすことのないように頑張っていく、これからも」


南海トラフの南に位置する志布志湾沿岸を回った感想は…

山岡耕春教授
「地元は津波に対する防災対策をそれなりに立てている。確実には被害が減らせると思う」

一方で、事前予測は難しいとして、南海トラフ地震で気象庁が発表する「臨時情報」などに頼り切るのではなく、地域独自の備えをさらに進めるべきと釘も刺します。

山岡耕春教授
「情報だけに頼るのはやはり危ない。基本は地震がいつ起きてもいいということを前提として対策をとるというのが、地震対策の一丁目一番地。日向灘の地震とか、あるいはもうちょっと南の地震も当然あり得るので、どこから地震・津波が来てもいいように、余裕をもって対策を立てておくことが大事」

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