(小野寺さん)「世界遺産は手段。保護だけでなくて、これで生活を豊かにするし、経済も回るし」
北海道・札幌市出身の小野寺浩さん(75)。1973年、当時の環境庁に入り、1990年から93年まで鹿児島県に出向。環境政策課長として、国内初となる屋久島の世界自然遺産登録へ道筋をつけました。
(土屋佳照知事※当時)「待ちに待った朗報が届いた」
環境省の自然環境局長に就いた2003年、奄美と沖縄は世界自然遺産の候補地に選ばれましたが、紆余曲折を経て登録が実現したのは去年の夏。18年後のことでした。「鹿児島の自然の価値を世界に認めてもらい、経済も豊かにしたい」という思いが実を結んだ瞬間でした。
(小野寺さん)「屋久島を世界遺産にする動きがなければ、世界遺産条約自体が締結されていない。それは完全に鹿児島県が頑張ったから。屋久島が登録されたときに、奄美と沖縄は絶対登録しなければだめだと思っていた。屋久島が登録されてからは約30年越しの悲願だったので。非常にうれしかった」
「世界で唯一の価値を有する自然地域を保護する目的」で登録される世界自然遺産は、現在218か所。日本では知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島、奄美と、国内5か所のうち2つがある鹿児島は「世界的にみても特別な場所」だといいます。
(小野さん)「鹿児島は2つの自然遺産を持っている。ものすごい可能性がある。同じ県だから比較もできるし、力を合わせることもできる。これからどうやって連携していくか。こんな県はここだけ」
小野寺さんは世界自然遺産登録までの道のりを振り返り、未来への提言をまとめた本を出版。「自然と共生する奄美モデルを築いてほしい」との思いが込められています。
(小野寺さん)「自然は大事だと言っても、生活していかないといけない人にとっては『それは何だ』という話になる。でも自然を保護することによって、長い目で見たときに、生活も経済も豊かにしないとだめだと思う。使いながらうまく守る。その典型が奄美だと思う」
国内最後の可能性が高いといわれる奄美の世界自然遺産登録。小野寺さんは、日本が世界で独自の存在感を発揮してほしいと話します。
(小野寺さん)「これから発展しないといけないし、自然も保護しなければいけない。独特の日本型の自然の保護のしかた。そういうメッセージを世界に出していかないといけない」
「世界の宝」として認められた奄美の自然。その保全と利用をどう両立させていくか。
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