地域防災 姶良市 火山・大雨への備え

シリーズ「地域防災」。今回のテーマは桜島の大規模噴火や大雨などへの姶良市の防災対策です。

錦江湾の湾奥に面する姶良市。


現在、市が策定している防災計画では、桜島の大規模な噴火に伴う津波や大雨による山間部での土砂災害などを想定し、防災対策に取り組んでいます。

(記者)「2年に一度行われている防災総合訓練です。今年は桜島の直下型地震を想定して訓練が行われました」

先月5日に行われた防災訓練では桜島の大規模噴火に伴う地震で津波が発生したとの想定で、
海岸に近い住民が避難所に指定されている小学校の屋上に避難する手順を確認しました。

(住民)
「子どもが小さいので駆け足で逃げることに不安はあるが、避難場所の確認をする機会になった」住民「海岸に近いところに住んでいるのでいつも情報を得ることを心がけている」

(姶良市危機管理課庄村幸輝管理監)
「桜島、錦江湾を前にしているので地震、火山による津波を想定している」

錦江湾沿いの国道10号が通る姶良市白浜地区です。背後には険しい崖が迫っています。

大雨で連続雨量が200ミリを越えると、がけ崩れが起きる恐れがあることなどから国道の通行ができなくなります。

これまでの大雨では度々、避難勧告が出されています。姶良市ではこれまで防災無線を使って避難の呼びかけや災害情報の提供をしてきましたが新たにコミュニティーFMからの情報発信にも取り組んでいます。

今年4月、市内の大型商業施設イオンタウン姶良内に姶良市が設置したあいらびゅーFMです。

運営は民間が行う公設民営型のFM局です。
(あいらびゅーFM上栫祐典社長)「開局の時点で姶良市との間で協定を交わし、大雨や台風の場合には、通常の放送内容を振替えたり通常の放送時間外に放送する取り決めがあり、すでに何度か実績もある」

4月の開局以来、これまでに8月の台風5号や大雨の際に避難所開設などの情報を放送しました。

(姶良市危機管理課庄村幸輝管理監)
「緊急時の場合、緊急割り込み放送というのが市役所からもできる」


白浜地区の住民によりますと以前は避難の呼びかけに応じなかった人もいましたが、防災への意識も高まり今では全世帯の住民が積極的に避難しているということです。

(住民)
「テレビなどでいろんなところの被害を見ているので、被害にあわないように自覚している。
足の不自由な人も以前は行きたくないと言う人もいたが、今では杖をついてでもいく」

一方、こちらは姶良市蒲生町の米丸地区です。


田園風景が広がるのどかな地域にあるのがおよそ8000年前に噴火したと推定される活火山、米丸・住吉池です。
噴火によってできたマールと呼ばれるくぼ地があります。直径およそ1キロの米丸マールと直径およそ500メートルの住吉池マールがほぼ東西に並んでいます。


気象庁は2003年から過去1万年以内に噴火した火山を活火山と定義していて米丸・住吉池もこの時、活火山に指定されました。


米丸・住吉池の周囲には過去の噴火に伴う火山灰が堆積したが地層が確認できます。


米丸・住吉池のおよそ8000年前の噴火では、2011年に爆発的噴火があった新燃岳から噴出された火山灰などの量のおよそ10倍の噴出物があったのではないかと専門家は指摘します。

鹿児島大学(火山地質学)井村隆介准教授「火山灰と呼ばれるものから黒っぽい少し大きな火山礫に変わっているのがわかる。爆発的噴火を何回も繰り返したことがわかる」

(地域住民)「御嶽山とかあちこち噴火しているから将来的には火口のあとだから油断はできないよなあと言っている」

鹿児島大学の井村隆介准教授は、近い将来、この地域で8000年前のような規模の噴火が起きる可能性は低いとみています。
このため、他の災害を想定した対策を優先させるべきと話しますが、
一方で、米丸・住吉池が活火山であることは理解し今後の変化には敏感に反応すべきだと指摘します。

鹿児島大学(火山地質学)
井村隆介准教授「ここで起こる噴火は1万年とか数万年に1回しか起こらないわけですからそれに対応するというのは経済的に割りに合わないと思う。」
「何もしなくていいよと言っているわけではなくて、きちんと活火山であることを知っておくこと、

もうひとつは活火山ですので何か地震が増えたり、地盤変動が観測されたり、あるいは噴気が増えたりとかいったことを地域の人たちも含めて、行政も目を光らせておくことが必要だと思う」

姶良市の今の防災計画では、米丸・住吉池について触れていませんが市の担当者は今後、対応を検討しないといけないと話します。
姶良市では今、2021年度の完成を目指して本庁舎を建て直す計画を進めています。
新しい庁舎は避難所なども備えた防災の拠点と位置付けています。
(姶良市危機管理課庄村幸輝管理監)
「姶良市としては災害に強い安全安心な街づくりのためにスムーズな自助共助公助の連携がはかれるように総合防災力の向上に取り組んでいく」

いつ起きるかわからない災害。災害発生時の迅速な情報伝達体制の構築や対応の拠点施設となる新庁舎の整備などさらなる対策の充実が求められます。

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