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13年前の新燃岳マグマ噴火調査した専門家「警戒レベルを盲目的に信じないで」・・・命どう守る

新燃岳のマグマ噴火から13年。
噴火の事前予測に見えた課題、そして、いざという時、自分の命を守るには?

霧島連山で登山ガイドをしている後藤辰美さんです。

(霧島市ふるさとガイドクラブ 後藤辰美会長)
「今年の元旦は、初日の出を見るため、(登山口は)駐車場が満杯になった」

20以上の火山が連なる霧島連山は、冬は雪景色、春はミヤマキリシマなど四季の表情を楽しめる、人気の山歩きのスポットです。

山を訪れた2人に後藤さんはある問いかけをしました。

(霧島市ふるさとガイドクラブ 後藤辰美会長)
「噴火があったら、自分はどうしたら助かるか、まず考えないと(避難壕になんとか)避難壕は登山口に来ないと無い(えっ、上にないんですか?)無い」

念頭にあるのは13年前の噴火です。

2011年1月26日。
新燃岳でおよそ300年ぶりに起きた本格的なマグマ噴火。2日間で噴出した軽石や火山灰などは桜島の10年分といわれています。

およそ2週間、活発な噴火が続き、風下の宮崎側では多量の軽石や灰が街に。鹿児島側でも当時、立入規制された3キロ圏を超えて噴石が飛んだほか、噴火に伴う空気の振動=空振で被害も相次ぎました。

(住民)
「部屋の奥まで吹っ飛んだ。扉のガラスが」

あれから13年。
新燃岳火口から3キロ離れた御鉢につながる登山道には、噴火の影響が残っていました。

(霧島市ふるさとガイドクラブ 後藤辰美会長)
「足をおろして座る岩だった、今は埋まってしまった」

御鉢の周辺には、新燃岳の火山れきが30~40センチ積もったといいます。

13年前の噴火では、予測の難しさがあらわになりました。マグマ噴火の1週間前に小規模な噴火があったものの、その後の噴火の予測はできませんでした。

さらに、噴火警戒レベルを2から3に引き上げたのも、マグマ噴火の開始から3時間余り経ってからでした。

火山学者らでつくる火山噴火予知連絡会の元委員で、13年前の噴火後の調査にもあたった名古屋大学の山岡耕春教授は「予測が難しいケースだった」とふり返ります。

(名古屋大学 山岡耕春教授)
「(マグマ噴火の)スタートが静かに始まった感じ。直前の警報は結構難しいと思う」

対応が後手に回ったケースはその後も相次いでいます。
戦後最悪の火山災害となった御嶽山では噴火警戒レベル1で噴火し、登山客ら63人が犠牲に。死因のほとんどは噴石の直撃でした。

口永良部島では、火砕流が放出された後に噴火警戒レベルを最高の5に引き上げ、一時、全島避難となりました。

山岡教授は噴火警戒レベルを「盲目的に信じないでほしい」と強調します。

(名古屋大学 山岡耕春教授)
「研究者が一生懸命、火山研究をしているのは、分からないことがたくさんあることの裏返し。噴火警戒レベルを盲目的に信じるのはやめたほうがいい」

新燃岳は2017年と2018年にも噴火。
その後、火山性地震などが増減するたびに、噴火警戒レベルは上げ下げを繰り返しています。

しかし、当時の記憶は風化しつつあります。

(県内から)
「無防備です。(噴火したら)下山する勇気を持ちたい」

(宮崎・都城市から)
「灰が降った時はひどかった。(記憶が)薄れてきている」

登山口の高千穂河原ビジターセンターでは、13年前の噴火以降、登山客にヘルメットを貸し出していますが、借りる人は減っているといいます。

(自然公園財団 修行祐太主任)
「荷物になって重たいかもしれないが、借りるか、自分で持っているならリュックに入れて楽しい登山をしてもらいたい」

ただ、御嶽山の噴火のように、無数の噴石が降れば、ヘルメットだけで命を守ることは難しく、仮に避難壕があっても入ることができる人数は限られ、大きな噴石や火砕流には耐えられないおそれもあります。

(名古屋大学 山岡耕春教授)
「自然に触れることはそれなりに命を失うリスクも多少ある。だからこそ楽しいところもある。それに対し備えることが必要」

御鉢を登っていく登山ガイドの後藤さんたち。今は登れない新燃岳が少し見えてきました。

(霧島市ふるさとガイドクラブ 後藤辰美会長)
「通ることができない山になった」

常に危険がつきまとう火山。
万一の対処は考えていてほしいと後藤さんは話します。

(霧島市ふるさとガイドクラブ 後藤辰美会長)
「警戒レベル1でもひょっとしたら大きな噴火に発展するかもしれない。危険はつきまとっていると思い、行動しないといけない」

新燃岳は現在、噴火警戒レベル1が継続中ですが、いつ再び活動が活発化して噴火が起きるか分かりません。
火山とのつきあい方を改めて考える機会になればと思います。

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