Q:世界各地で写真展を開くなど活動を続けている写真家千々岩孝道さんにお話を伺います。千々岩さんおいくつですか。
千々岩:1976年11月に佐賀県で生まれました。44歳です。
Q:専門学校では、イラストレーション学んだそうですけれども、写真の道を歩まれたきっかけは?
千々岩:2003年に鹿児島で写真家の荒木経惟さんのポートプロジェクトありまして、その被写体として参加して、写真を通じて1枚の作品を作り出すプロセスに引き込まれたのが始まりでした。
ポートレート、つまり肖像画ですね。人の顔を撮るんですが、そのプロジェクトです。自分を撮ってもらいたいなという時期だったんで、荒木さんの事務所に手紙を出して、そのプロジェクトに参加しました。
Q:荒木経惟さん、愛称「アラーキー」。あの1枚の写真が出来上がるまでの過程にどんなプロセスが刻まれているんですか。
千々岩:そのときは荒木さんは、カメラを次から次へといろんなタイプのものに変えて、フイルムを何本も何本も消費しながら、自分の体に触れたりとか、脱いでとか言ったりとか、距離も近づいたり離れたりとか、汗をいっぱいかきながら、被写体を引き出すために、あらゆるコミュニケーションを試みて。写真家と被写体が、ぶつけ合う瞬間の想像を刻んでるような感想を持ちました。
Q:15年前ですか、メキシコに渡って現像とか焼付けなど、 DPE学んだそうですね。
千々岩:オアハカにある、マヌエル・ブラボ写真学校ていうのがありまして、その講師の方にどうしても学びたいからちょっと教えてくれないかと懇願したところ、特別に数週間のワークショップをマンツーマンでやってもらうことになって、そこで初めて暗室でのプリントを経験するんですが、生まれて初めて自分の写真が現像液から写真が浮かび上がってくる瞬間が、当たり前なんですけども、写ってるっていうことに感動して、そこから写るっていうこと意識的に考えるようになりました。
その後、フランス人写真家のアントナン・ボルジョーと屋久島で出会い、共にカメラを持って屋久島を巡りながら、お互いの技術や情報などを交換しながら撮影をしていきました。そこで写真を通してアイデンティティの交換みたいな経験があって、2015年から日仏共同で屋久島国際写真祭という写真プロダクションをセッティングすることになって今も活動しております。屋久島国際写真祭は、屋久島で魅力ある写真家を国内外から屋久島に招いて、展示やワークショップとか作品制作とかを行うイベントです。
その後、自分たちは南フランスのアルルにあるギャラリーモンスターというところを拠点に、国内外の写真祭とか写真イベントに、今度は移動式ギャラリーとして参加しまして、で、さらなる写真との出会いを広げました。その中で2015年にパリで開かれたフォトドックという国内外のギャラリーが作品販売を行う写真イベントで、ベストギャラリー賞をいただきました。
Q:すばらしい。2003年に屋久島に移住なさったそうですけれども、移住のきっかけってのはどういうことだったんですか。
千々岩:自分に姉が2人いるんですけども、真ん中の姉が旅の途中で聞いた屋久島の魅力の話をして、そしたら屋久島で集まろうってことで家族が島で落ち合って、生活が始まりました。
Q:実際に暮らして、屋久島の魅力をたくさん感じてらっしゃるんじゃないですか。
千々岩:そうですね。本源的な普遍的なもの、大きな循環と、生物が織りなす循環。そこから発生する文化風習とかとに出会う機会があって、そういうものから刺激を受けて、製作に繋がっています。
Q:屋久島の皆さんのアルバムに眠る古い写真を、集落ごとにアルバムにして出版したり、引き伸ばした写真を集落の堤防に展示したり。いろいろ取り組んでいらっしゃいますが、どんな思いがあるのでしょう?
千々岩:昔の家族アルバムには、大事に撮った個人的な人生の時間が写されていると思うんです。そこの中に写っているものはとても普遍的で、誰もが覚えのある景色が写ってるんです。それを3 m とか、大きく伸ばして野外に展示することで、個人の写真が公の写真に変わって、閲覧者の中の物語へと、ある家族の写真の物語が交差し始めるんです。そこから何か確かに前あったもの、今もここにあるものとか、これからもあってほしいことと繋がってですね、それが島の未来へと継承されることを望んでプロジェクトを始めました。
Q:千々岩さんにとっての豊かさとは、なんでしょうか?
千々岩:豊かさとは、余白のようなものだと思いました。余白があることで、書かれた物事とか、物事が生きてくるっていうか、スペースがあるから際立ってくる。いっぱいいっぱいの状態だと価値っていうかあんまり見つけにくいものなんですけども、大きく余白があって、その物事を見た場合、その大切さなどが際立ってくるっていう理解しやすくなる。余白のようなものが多分豊かさなんじゃないかなと思います。
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