奄美大島在住の写真家・浜田太さんは、長年、奄美の森に通っています。
これまで、様々な生き物たちを撮影してきました。中でも、ライフワークともいえるのが…アマミノクロウサギです。
原始的な姿を色濃く残していることから、「生きた化石」ともいわれます。奄美の象徴ともいえる存在ですが、その生態は謎に包まれています。
(浜田さん)「クロウサギというテーマを見つけたことによって、自分の人生が決まった」
浜田さんがクロウサギに初めて出会ったのは、30年以上前のことです。
(浜田さん)「石の塊みたいに見えて近づいたら、目が赤いルビー色に光った。人知れずこういう場所に、こういう生き物が生きているんだなと思って。なぜ彼らがここに生きてるんだろうか、どうやって生きてるんだろうか、色々疑問がわいてきて。その一つに、彼らを育むこの森があるから、彼らも生きられたんだ。森を撮らずして彼らを語ることはできない」
夜行性で警戒心の強いウサギをカメラにおさめるのは、容易ではありません。無人カメラを設置して遠隔操作するなど、試行錯誤を重ねてきました。
(浜田さん)「険しい森の中で生きていく。姿が見えないから声で交信するしかない。この環境に順応してきたといえるかもしれない。アマミノクロウサギは、この中で生きていく術を持って今に生きている」
浜田さんはクロウサギを通して、奄美の自然を見つめ直すことができたと語ります。
(浜田さん)「ウサギを通して奄美の自然に磨きをかけたら、奄美の森の真実が見えてきた。アマミノクロウサギを追いかけることで、その周辺の生き物たちの関わりがすごく見えてきた。」
(浜田さん) 「色んな生き物たちが、食物連鎖や生存競争の中で生きている。奄美の自然の懐の深さ、世界に誇れる自然だということに気づかされた」
クロウサギを追う中で出会ったものがあります。海に落ちる、巨大な滝です。
(浜田さん)「私が初めて見たのは今から23年前。アマミノクロウサギの写真集を作るために、船をチャーターしてここをずっと撮影してまわった時があった。その時は船の上からしか撮れなかったので、仰いで撮った写真を写真集に掲載した」
それから20年以上の時を経て、浜田さんは滝に再会します。
(浜田さん)「昨年、クロウサギが海岸線にどれくらい出てるかという調査をするために滝のところまで来た、久しぶりに来たなって感じで。その時に思い立ったのが、あの時は下からしか撮れなかったが、ドローンで撮ってみようかとひらめいた」
当時はなかったドローンを使って撮影してみると、その全貌が明らかになりました。以前撮影したのは滝の一部で、水の流れはさらに上から続いていたのです。落差181メートル。九州最大級の滝であることがわかりました。
(浜田さん)「アマミノクロウサギが私を森に導いてくれて、色んなものを見せてくれた。私はいつも言うんですが、奄美の自然というのはダイヤモンドの原石だと。私は生涯かけてそういうことを伝えていきたい」
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