#8 照国町日和
鹿児島市の繫華街、天文館から城山に向かって歩くことおよそ10分。
城山の方に目をやると、照国神社の大きな鳥居が見えてきます。
照国神社は薩摩藩主、島津斉彬(なりあきら)公をまつっている神社です。
市街地から近いこともあり、ふらりと足を伸ばしやすい照国神社。
初詣や六月灯など、多くの人でにぎわい、1年のうちに様々な光景を見せてくれます。
境内を進んでいくと、珍しい形に剪定されている大きな木が迎えてくれます。
鳥が大きく羽を広げているように見えるこの木を、幼い頃から不思議に思っていました。
『斉鶴』と名付けられ、鶴が大きく翼を広げているように見立てているそう。
鹿児島の人たちに親しまれている身近な神社ですが、この日は静かで、境内は凛とした空気に包まれていました。
【12月『幸先詣』には花手水が】
※幸先詣=「幸先よく新年を迎えられますように」という願いが込められています。
新年を迎える前にその年1年の恩を感謝し、新たな年のご加護を願うもの。
拝殿の左脇を進んでいくと青々とした竹林が見えてきました。
神社の中にこんな場所があったとは…
左手には水神、地神と書かれた祠も並んでおり、水や大地のありがたさを感じることができます。
空気がより一層引き締まっているように感じました。
静かにくつろいでいた先客に挨拶し、照国神社をあとにします。
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城山の麓には『歴史と文化の道』と呼ばれる散策コースが続いています。
歩きながら鹿児島の歴史と文化を身近に感じることができ、観光で訪れる人も多い場所です。
まっすぐに伸びる石畳とガス灯が、情緒ある景観を生み出しています。まっすぐな道沿いには県立博物館、西郷隆盛像、そして鶴丸城が並んでいます。
こちらは県立博物館。
南北600キロにわたる鹿児島県の豊かな自然を紹介する博物館です。
レトロな外観が目を引きますが、昭和2年に建てられ、当初は図書館として利用されていたそう。
国の登録有形文化財に指定されており、建築物としても歴史があります。
入場が無料で、気軽に立ち寄れるのも魅力。
剝(はく)製や模型などの展示が充実しているので、実際に目で見て体験しながら鹿児島の植物や生き物、地形について学ぶことが出来ます。
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そして鹿児島といえば…西郷さん!
見慣れた正面ではない角度から銅像を見るのは、新鮮でした。左斜め下から見上げてみると…軍服に合わせて、帽子を持っているのが分かります。
道路を挟んだ向かい側にはフォトスポットが用意されていて、修学旅行生が記念撮影をして楽しんでいました。
城山を背に、堂々とした姿の西郷どん。時には間近で、じっくり眺めてみてはいかがでしょうか。
道沿いの水路には、コイが泳いでいます。
光が反射して、水面に赤や金色が見え隠れして美しいです。
すれ違った外国の方も、街中の水路に泳ぐコイを珍しそうに撮影していました。
主のように立派な金色のコイも姿を見せてくれました。
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鶴丸城の方に歩みを進めていくと、左手に市立美術館の淡いピンク色の建物が見えてきます。西洋風の外観が印象的で、城山に近い街の雰囲気と調和しています。
黒田清輝や藤島武二など、鹿児島にゆかりのある画家の作品を中心に展示しています。
桜島など郷土の風景を描いた作品も多く、芸術を通して「ふるさと」を見つめることが出来ます。
中に入ると広々としたエントランスに、ドーム状の天井が。
昼間はやわらかな光が差し込み、穏やかな空気に包まれます。
薩摩切子を思わせる模様が美しいですね。
時期ごとに催しの内容が変わるため、足を運ぶたびに新しい作品に触れられるのも嬉しいところです。
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さらに進んでいくと、威風堂々と佇む鶴丸城の『五楼門』が見えてきます。
お堀には蓮が植えられており、この季節は歴史を感じる石垣と蓮の緑のコントラストが映えます。6月から7月にかけてピンク色の大きな花がいくつも咲き、美しい風景となります。
鹿児島(鶴丸)城は1600年頃に築かれた島津家の居城です。
当時の姿のまま残っているのはお堀や石垣ですが、関ヶ原の戦いと同じ時代に造られたものをこうして目の当たりに出来るのというのは、不思議な感動があります。
城跡に建てられたのが、鹿児島県歴史資料センター『黎明館』です。
鹿児島の歴史や民俗、文化遺産などを広く展示紹介している施設です。
館内に併設されている『CHIN JUKAN POTTERY(チンジュカンポタリー)喫茶室』を訪れました。
薩摩焼を代表する窯元「沈壽官窯」の生み出す作品をより現代的に、身近に感じることが出来ます。
落ち着いていて、ガラス越しにも伝わってくる店内の柔らかな雰囲気。
入り口付近のスペースには、実際に店内で使用されている器やカトラリーが販売されています。
「薩摩焼=絵付けされている」というイメージがありましたが、手になじむ温もりと絵柄が施されていないシンプルなデザインのものばかり。
釉薬の色の出方によってひとつひとつ表情が違うところも魅力です。
ここで、ひと休み。「檸檬ケーキ」と「薩摩紅茶」のセットをいただきました。
まだまだ日向は暑い時期、すっきりとした味わいの薩摩紅茶に癒されます。
《ケーキのお皿やカトラリーが入れられた器も「沈壽官窯」の作品》
鹿児島では、”鹿児島”や”薩摩”と名の付くものが身近に溢れていますね。
地元の方が丹精こめて作ったものを手に取ることができ、日常の中にふるさとを感じることができるのも嬉しいところ。
しっとり優しい甘味のケーキをいただいて、陽だまりのなか心地よい午後を過ごさせてもらいました。
こちらはリンゴの形をした可愛らしい器。お店では砂糖を入れてシュガーポットとして使っていました。
本物のリンゴのように見えるほど。職人さんの「技」を感じますね。
白薩摩独特の美しさがそのままあらわれている白も素敵ですが、今までの薩摩焼にはないような赤色を初めて目にしました。
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もうすぐ黄色く色付いた銀杏並木が、秋を感じさせてくれる季節になりますね。木陰に入ると少し涼しく、季節が移ろうのを感じます。
『歴史と文化の道』…石畳を歩きながら、ふるさと鹿児島の日常をいとおしく思いました。
ノルスタジックな景色を楽しみながら、日常のなかにある鹿児島のおだやかな時間を過ごしていただけると嬉しいです。
✈お読みくださりありがとうございました✈✈