「#3か月後に鮨屋を開く大学生」が伝える市場に並ばない魚の魅力 「魚を食べる楽しさ知ってほしい」
鹿児島市天文館に先月オープンしたこちらの店。メニューはすべて魚料理で店主を務めるのは鹿児島大学水産学部の学生です。幼い頃からの魚好きが高じ、その魅力を発信しようと店を始めた大学生を取材しました。
色とりどりの寿司や一風変わった創作料理まで並ぶ魚尽くしのコース。提供するのは鹿児島市天文館の「魚食発信基地オサカナばんざい」です。
「五感」ではなく「魚感」で楽しむをコンセプトに県内で獲れた新鮮な魚を使った寿司や刺し盛などのコースが楽しめ、家族が経営する飲食店を借りて日曜日と月曜日の夜だけ営業しています。
カウンター客を前に手際よく料理を仕上げるのは店主の西海晴さん(22)。鹿児島大学水産学部4年の大学生です。大学を休学し、去年11月1本の動画をSNSに投稿しました。
「3か月後に鮨屋を開く大学生」と題した動画は再生数120万回を超えるなど話題に。店を開くまでの金銭面での苦労や仕入れ先の漁師との交流などを発信し続け、その挑戦は注目を集めました。
(オサカナばんざい・店主 西海晴さん)「これまで魚に興味なかったけど、ここをきっかけに魚が好きになれた、お家でも食べてみようかなと思える店作りに挑戦していきたい」
そして、タイトル通り、3か月後の今年2月、映像制作の仕事などで貯めた50万円ほどを元手に念願の魚料理店を始めました。
広げたのは自作の魚図鑑です。これまで食べた魚の生態など細かな解説とともに、実際に食べてみた感想などが丁寧にまとめられています。
(オサカナばんざい・店主 西海晴さん)「図鑑に出てくる、特に海水魚を見た時に、こんな生き物がいるんだと感銘を受けた。僕の人生にはなくてはならなかったもの、良い相棒みたいな存在」
こだわりは仕入れる魚の種類です。
(記者)「南さつま市笠沙では定置網漁で続々と魚が引き揚げられる中、かごには市場に乗らない魚」
店で使うのは「未利用魚」と呼ばれる市場には並ばない魚たち。認知度が低いことや漁獲量が安定しないことなどから市場で値段がつかないため多くが廃棄されています。
(オサカナばんざい・店主 西海晴さん)「イスズミ。おいしそうに見えるが臭いものも。臭くないものは本当に美味しい」「普段食べたことない魚はこんな味するんだと、魚を知ってもらうきっかけになればいい」
食材としての「未利用魚」の魅力を知ってもらうため大隅や南薩などへ足を運び、「未利用魚」を提供してもらえるよう各地で交渉してきました。
Q.西さんどんな人?
(漁師 長井洋将さん)「変わっている。僕らからするとみなさんが興味を持たない、値段がつかない魚を使ってくれる。漁師としてはありがたい」
今月24日からは完全予約制に変更し、コース料理が中心の営業に切り替えました。この日はリニューアルを前に従業員らとともにコースを提供する流れを確認し店のPRもかねてその様子をライブ配信しました。
動画配信や店のスタッフとして西さんを支えるのは同級生や後輩たちです。
(高校同級生で従業員 石田航明さん)「彼のやりたいこと、目指していることのために(客に)いかに満足してもらえるかやっていく」
そして、完全予約制での初めての営業日をむかえました。各地から仕入れた未利用魚で作った刺し身盛やアカエイの煮物など普段スーパーなどでは並ばない規格外の魚を使った6品が並び、西さんと客の会話も弾みます。
(客)
「小鉢がたくさん楽しめ、色んな魚を知れたので、勉強にもなり満腹で幸せ」
「興味を持って買おうとか、食べてみようという人増えたら捨てられるものも活用できる世の中に」
客の中には、未利用魚を提供した漁師の姿も。
(肝付町の漁師)「漁師すらも食べないので、逆に食べ方教えてもらっている。魚が好きなだけでなく、背景に目を向けてくれて感動した」
(西海晴さん)「料理おいしかったかな、大丈夫だったかな」
(肝付町の漁師)「おいしかった。全然、素人じゃない」
(西海晴さん)「本当に魚に苦しめられている。好きだけど苦しい」
(オサカナばんざい・店主 西海晴さん)「食べたことない魚で味の想像もつかない状態で、おいしいとなっているのがすごく印象的。3か月経って開店したが気を緩めず、これからより良い魚食の楽しさを伝えられる空間を追求していきたい」
これまでスポットの当たらなかった魚に新たな価値を加える大学生料理人。消費者にその魅力を伝える活動は始まったばかりです。
営業は毎週日曜日と月曜日の予定で「魚食発信基地オサカナばんざい」のインスタグラムで予約を受付しています。