きっかけは「恩返し」即完売の人気豆腐が復活 地域活性化の一助に 姶良市

鹿児島県の姶良市で作られているこちらの豆腐は、店に並べばすぐに売り切れるほど人気です。2年前に製造が途絶えましたが、今年復活しました。地域で盛り上げる豆腐作りを取材しました。

姶良市の農産品販売所です。朝から訪れている客のお目当ては…。

(客)「豆腐を待っている。きょう来る豆腐は温かくてすごくおいしい。帰ったらすぐ食べちゃう」

豆腐が販売されるのは、毎週、火曜と金曜の2回のみ。店頭に並べばあっという間に完売する超人気商品です。

(客)
「醤油をかけて食べると最高。いつも注文している」
「近所の人にあげたら、この豆腐は他と違うと。とてもおいしい」
「すぐ売り切れてしまう。柔らかい」

この日も1時間足らずで完売しました。

作っているのは、姶良市加治木町小山田地区の女性たちによる農産加工グループです。リーダーの前田三枝子さん(73)は、農業の傍ら豆腐を作っています。

(前田さん)「大豆の濃度にこだわっている。いっぱい入っていて濃厚」

大豆をふんだんに使った木綿豆腐。おいしさの秘密は、高温の圧力釜ではなく、平窯を使って手作業でゆっくりと大豆を煮ることです。

 

(前田さん)「平窯で煮ることで香りや風味が残る。自分が食べておいしいものをお客さんに届けたい」

多くの人の愛される小山田地区の豆腐。しかし、作り手が高齢化し2年前に活動を停止、その味は一度途絶えました。

(前田さん)「立ち上げから関わっていたから、無くなるのがさみしかった」

復活したのは今年6月。そのきっかけを作ったのが農家の永吉和也さん(51)です。永吉さんは以前は会社員でしたが、9年前に退職し就農。農業未経験の永吉さんを支えてくれたのが、前田さんでした。

(永吉さん)「野菜の作り方から、全て(教わった)。前田さんがいなかったら、ここまで続けてこられなかったのは間違いない」

(前田さん)「頼まれれるとノーと言えない。永吉さんには脇が甘いと言われる」

お世話になった前田さんに恩返しを。思い立ったのは、かつて前田さんが大切にしていた豆腐作りの復活でした。

(永吉さん)「本当は豆腐を作るだけならやりたいと聞いていたので、作るだけの環境を頑張って作ってみようと。それしか、それ以外返せるものが無いので」

永吉さんは、会社員だった経験を生かして材料や販売先の確保、グループの管理運営を担当。製造は、前田さんをはじめ声をかけて集まった地元の女性4人が担います。

(メンバー)「誘っていただいて学びながらやっている。楽しくてやりがいがある」

地元では豆腐作りに必要な大豆を生産する動きが広がっていて、JA姶良によりますと、姶良市内の大豆の作付面積は昨年度はおよそ4600平方メートルでしたが、今年度は4倍近くのおよそ2万平方メートルまで拡大しました。

さらに、豆腐の販売先も徐々に増え、現在は姶良市や国分を中心に9か所で販売。豆腐が店に並ぶ日は客が増えるといいます。

(おごじょの店代表 隈元よね子さん)「前の豆腐が復活したと皆喜んでいる。私も買った、ファンのひとり。地元の力を永吉さんがリーダーになって引っ張りあげていて本当に良いこと」

(永吉さん)「おいしいよねと言ってくれるので、(客の反応は)メンバーに必ず伝えている。モチベーションや作り甲斐になるので」

(隈元さん)「頑張ってください」
(永吉さん)「ありがとうございます」

恩返しの気持ちから始まった豆腐作りは、周囲を巻き込みながら地域を活気づけています。

(前田さん)「皆と触れあって、お客さんにも受け入れてもらって楽しい。楽しくやるのがモットー」

(永吉さん)「自分の初動は小さいことで、始めてみれば商店のおばちゃんや買いに来るお客さんとか、みんなが盛り上げてくれている。地域全体が活気づいてくれれば」