ナゴシドン 伝統行事をつなぐために 田中綾音さん
よりよい未来を目指し、地域で活動するみなさんを紹介する「かごしま未来図鑑」です。
少子高齢化の中、伝統行事を続けるために新たな方法を編み出し頑張る肝付町の地域おこし協力隊田中綾音さんです。
地域の安泰や五穀豊穣などを願う伝統行事「ナゴシドン」。
岸良海岸で、地元の平田神社に舞を奉納するもので、室町時代の西暦1400年ごろには肝付町岸良地区で行われていたとされますが
近年は担い手不足が課題になっています。
背景にあるのは少子高齢化と人口減少です。
ナゴシドンが伝わる岸良地区の人口は623人でピークとされるおよそ60年前からすると人口は5分の1に減少。
高齢化率はおよそ63.9%です。
※(65歳以上は398人)
肝付町地域おこし協力隊 田中綾音さん
「何に関しても担い手が限られている。/(ナゴシドンも)地元の高齢の人や宮司さんの息子、娘が(町外から)帰ってきてやったりしていたがなかなか厳しい」
静岡県出身で肝付町の地域おこし協力隊員3年目の田中綾音さん(26)です。
田中さんは肝付町にやってきたおととし、ナゴシドンを継承するためにSNSやホームページで“町外“から参加者を募ることを考えつきました。
地元からの反応を心配しましたが、岸良の人たちは理解してくれました。
田中綾音さん
「これまでずっと地元の人でやってきたので“よその人”がやるっていうのはどうなんだろうって心配だったが私を受け入れてくれたように“よその人”でも気持ちを持って興味を持ってしてくれるならありがたいことだと言ってくれた」
田中さんは、おととし、ナゴシドンの参加者を初めて町外から募集。
神舞を舞えるお年寄りから、伝統を次に引き継ぐという
意味をこめ、「つなぎ手」として参加者を募ったところ、インターネットを通じて
19歳から29歳の8人の若者が集まり、舞手として参加しました。
去年は、町外から6人がつなぎ手として集まり舞手と裏方に。
町外からの参加に刺激を受けて地元の子どもや若者も5年ぶりに舞手に加わりました。
そして、町外からのつなぎ手が参加するようになって3年目の今年。
ナゴシドンに変化が。
地元の子どもや若者たちが、いち早く参加を希望したのです。
去年、舞手として参加し東京へ転校した子どもも加わって、舞手は合わせて11人に。
この日は、ナゴシドンで奉納する4つの神舞のうち2つの演目の練習が行われていました。
岸良小学校5年 岩﨑歩睦君(初参加)
「昔から受け継がれているものを自分もできているっていうのはすごくうれしい」
東京へ転校 後藤みのりさん(2回目)
「地域を少しでも盛り上げられたらいいなと思ったのと田中さんの役に立てたらいいなと思って」
指導する黒木和人さん
「田中綾音さんが一生懸命してくれたからそれに対して岸良の人たちも一生懸命してくれるようになった、あの子がいないとこれだけにはならなかったと思う」
4日間の練習を重ねて迎えた当日。九州南部には台風が接近していました。
雨が降らないことを願いながら岸良海岸では、裏方に回ったつなぎ手が、テント設営など準備を進めます。
神奈川から 溝口良伸さん(鹿屋出身)
「1回目2回目は舞の奉納もしたが今回はサポートメンバーとして来て、岸良の美しさに惹かれて毎年来ている」
最後の集会では子どもたちやつなぎ手たちが円陣を組み気持ちを一つにしました。
午後2時。
平田神社で神事が行われ
ナゴシドンが始まりました。
太鼓や笛を鳴らしながらゆっくりと歩いて岸良海岸へと向かいます。
風はあるものの、雨は降らず、時おり日差しが照る中神舞の奉納が行われました。
田中さんや裏方に回ったつなぎ手たちは、舞手が熱中症にならないようにと飲み物を配って気遣います。
東京に転校 後藤みなみさん(初参加)
「たくさんふりがあったからちょっと間違えちゃったけどそれ以外のところは成功できたから良かった」
地元の人
「地元の子どもたちがやっと自分たちでやろうというのが一番何よりうれしかった」
神舞の間は雨も降らず今年も無事にナゴシドンが終わりました。
田中綾音さん
「やりたいことを応援してくれ、見守ってくれるほんとうに良い町。」
「いろんな人のおかげでやっていけてるなという実感」
少子高齢化の影響で担い手不足に陥っていたナゴシドン。
田中さんをきっかけに町内外の人を引きつけながら新たな形で歴史をつないでいきます。