【防災・私の提言】鹿児島大・井村隆介准教授「自然は牙をむく平時に備えを」
9月1日は防災の日です。防災について専門家に聞くシリーズ「防災・私の提言」をお伝えします。1回目は、火山や地震を研究している地質学が専門の鹿児島大学・井村隆介准教授です。
(井村隆介准教授)
「よく『火山と共存』というが、共存はできない。相手の方が圧倒的に強い。普段と違うときには、(火山と)距離をとるしかない」
鹿児島を拠点に火山や地震の研究を続けている、鹿児島大学の井村隆介准教授(58)です。
鹿児島では、桜島の大正噴火を教訓に、観測体制の整備や防災の取り組みが進められてきました。
7月に桜島の噴火警戒レベルが一時最高の5に引き上げられた際には、避難指示が出された住民全員がスムーズに避難できたとして評価する一方、課題もあったと指摘します。
(井村准教授)「着の身着のまま来てしまった、薬を置いてきてしまったと。訓練のときにはできていたのに、本番ではできなかった。(避難は)一晩ぐらいだと思われていたのがショックだった。今回何も(被害が)なかったから、次に備えてもらえたらいい」
そして、桜島だけでなく、県内にあるほかの火山にも目を向けるべきと話します。
(井村准教授)
「日本で111ある活火山のうち、11が鹿児島にある。九州は火山が多いと思われているが、17しかない。そのうちの11が鹿児島にある。もっと火山に対する知識を持っておかないといけない」
過去に噴火したり、現在も活発な活動をしている活火山の数は鹿児島は11で、北海道、東京都に次いで3番目の多さですが、北海道や東京と比べて周囲に人が多く住んでいるのが特徴です。
県内11の活火山のうち、5つは気象庁が24時間監視・観測する対象にしていますが、それ以外の6つの活火山でも噴火の可能性があることは知っておくべきだと話します。
(井村准教授)
「火山というと桜島が元気なために、桜島しかイメージできないことになっているが、霧島とか米丸・住吉池のような姶良市にある火山、池田・山川のような指宿の市内にあるような火山も、噴火するかもしれない。
恵みの部分は何もないときは大いに享受すればいい。でも火山で何かあったときは、その部分は裏返しになる。身近につきあっていた分だけ、大きな被害になることもある。
そういうことを知っておくことが、鹿児島に住んでいる人たちの流儀、作法だと思う」
そして、備えるべき災害は火山だけではありません。県内では、これまでもたびたび強い地震が発生し、先週も長島町で震度4を観測した地震が発生したばかりです。ただ、鹿児島での地震への備えは、決して十分ではないと話します。
(井村准教授)
「鹿児島の人は大きな地震がこの100年ぐらいなかったので、鹿児島は地震がないと思っている。熊本もそうだが、大きな地震はありえる。火山の噴火は起こる場所がだいたい決まっているが、地震は日本に住んでいる限り、どこで感じてもおかしくない」
そして自然が豊かで身近な鹿児島だからこそ、自然の力によって生じる災害を知り、普段から備えることが大事だと言います。
(井村准教授)
「恵みは大いに享受してもらいたいが、自然が静かなときはこれまで起こってきたことを、実は着々と準備している。私たちはそのときに、享受だけして楽観的に生活していると、次に(災害が)起こったとき、自然が牙をむく形になってしまう。
自然がおとなしいとき、恵みを与えてくれているときに、準備をしておかないといけない」