Q:鹿児島県歴史美術センター黎明館学芸員の小野恭一さんに話を聞きます。
黎明館では、奄美群島の歴史や文化を詳しく知ることができる企画「特別展ほこらしゃ奄美、海と山の織りなす島の世界」が開かれています。小野さんはこの特別展に関わっていらっしゃるということですが、奄美が専門の学芸員でいらっしゃるんですか。
小野:奄美の歴史や、民族の分野を担当しております。奄美群島を中心に、民俗行事の調査なども行っています。
Q:奄美群島は、全部回られたんですか。
小野:請島と与路島だけまだ行ってないんですが、他の島にはかなり調査で行きました。
Q:小野さんご出身はどちらなんですか。
小野:私は鹿児島市の出身です。奄美に関わることになったきっかけというのは、黎明館に勤める前、学校の教員として5年間、奄美大島に赴任しまして、そこで奄美の文化、歴史に触れたことです。
Q:今まで経験したことのないような文化にも触れて、ある意味衝撃を受けたということなんでしょうか。
小野:そうですね。やっぱりあの文化というのは非常に面白いですしすごく豊かなですね文化がこの中にあって、私も衝撃を受けました。
Q:一番興味を持った、ここをもっと調べてみたいと思ったところってどんなところだったんですか。
小野:集落の行事って、だいたい同じ日に行われるんですね。奄美大島ですと、だいたい旧暦の8月に豊年祭とか種下ろしとか行われていて、集落ごとに歌や踊りが全く違うんですね。同じ日に他の集落まで見るっていうのができないので継続的に調査して、その集落の八月踊りというのを詳しく調べたいなというふうに思っています。
Q:世界自然遺産登録されて、ますます奄美は注目されると思いますけれども、この企画展の一番の見どころってどんなところでしょうか?
小野:この展覧会は自然ではなくて、自然の育んだ歴史と文化を紹介するものです。奄美群島の歴史は非常に複雑な歴史をたどっております。琉球国の統治下に置かれたり、また薩摩藩の統治下に置かれたり、非常に複雑な歴史を持っておりますし、また古代から、海を越えた交流という中で文化が育まれてきました。そういったところを、いろんな歴史や民俗、美術工芸のいろんな資料から紹介する展覧会です。
Q:まず会場に入ると、田中一村の絵画の鮮やかな色がぱっと目に飛び込んできますね。
小野:田中一村というと、奄美の自然をダイナミックに再構成して描いていますけれども、実はそれだけじゃないんですね。田中一村の描いたスケッチとかそういったものには、八月踊りとか闘牛とか、島の民俗も描かれていて、深く奄美の生活の中に身を置いた一村ならではの絵画も展示しております。
また、琉球嶌真景絵巻という絵巻があります。約13 m あります。江戸時代の後期に、四条派の画家の岡本豊彦が描いた絵なんですが、非常に正確に奄美の風俗や風景を描いています。しかし岡本は、実は奄美に行ったことないんです。
Q:歴史的なスケッチですけれども、今でも残っている文化、伝統文化というのも多いですよね。
小野:やはりそういった文化というのが受け継がれてきて、そして今も少しずつ変わりながらも、次世代に受け継がれていく。
Q:この令和の時代を生きていく上で、豊かさというのはどのようなことだと感じていらっしゃいますか。
小野:奄美の中で私が感じたのは、集落の人たちとの繋がりであって、一つの行事を完成させる。一体感っていうものですね。ここに豊かさを私は感じます。
Q:小野さんのお好きな奄美の場所、好きな時間の過ごし方を教えてください。
小野:やはり八月踊りを踊っている、その時間が最高の時間です。
Q:やはり皆さんの輪の中に一緒になって入るという、あの時間がとても豊かな時間ですね。
小野:そうですね。家々をまわりながら、ごちそう食べ、黒糖焼酎をのみながら踊るのは最高ですね。
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