屋久島の自然を紹介するプロフェッショナル、
ネイチャーガイドの真津昭夫さんのメッセージです。
樹齢1000年を超える屋久杉の巨木が点在する、屋久島の森。
真津さんがこの森と出会ったのは、40年ほど前のこと。
屋久島に暮らしていた詩人山尾三省さんの思想に共感して、都会から移住してきた時でした。
「Q:縄文杉とか初めて見たときはどんな感じだったか覚えていらっしゃいますか?
A:覚えてはいるんですけども、なんか言葉になるような記憶はあまりないですね。
おっきいっていう感じも、当然あの頃は触れたんですけども、それも言葉にならなかったような。
いわゆる見たっていうのと、やっぱし圧倒的に暗い森だなっていう」
「やっぱし何回か行くに従って三省さんが詩で詠んだ縄文杉、縄文杉は語らないんだと。
語らないでただそこにあるっていう存在。
そういう捉え方が一番僕もフィットするなという感じでしたね。
■「聖老人」
「ごわごわしたその肌に手を触れると遠く深い神聖の気が沁み込んでくる
聖老人あなたはこの土地に生を受けて以来ただのひとことも語らずただの一歩も動かずそこに立っておられた」
1993年、屋久島は白神山地とともに日本で最初の世界自然遺産に登録されました。
多くの人が屋久島を訪れ、縄文杉への集中やトイレの問題など多くの課題も出てきました。
真津さんには屋久島が世界遺産になる前からネイチャーガイドとして大切にしてきた思いがあります。
「最初は自分でもそんなに気付いていなかったんですけど、徐々に色んな経験をするに連れ、自然というかは基本的に自分で整える。何か壊れたらそれを立て直す力がしっかりある訳ですよね。それはしっかり僕らは信じていいと思うんです。だから自然保護、保護する気持ちはすごく大切だとは思うんですけど、自然自体でしっかり立て直す力があるのを理解した上で色々人のほうが対処していったらいいのかなっていう気はしますよね。
もうう一つ思うのは、人っていう動物はやはり自然を壊しながら利用する訳なんで、僕のこういう仕事のテーマでもあるんですけど原生林っていう在りようですね。
その中に人っていう動物はいれないんですよ、残念ながら。
僕らはそのありのままの自然、原生の中の端のほうで利用しながら暮らしていくしか術がない訳ですよね。
それっていうのはしっかり理解して自然と付き合う、利用する、保護するっていうのが必要だろうっていう気はします」
(未来へのメッセージ)
「まず、こういう一般的に自然と呼ばれてる場所に身を置くことですよね」「その中から得られる感覚であったり気付きであったりっていうのが沢山あると思いますから」
「なかなか社会の状況としては反対の方向にかなり動いている気もするので。
例えば経済であるとか政治であるとか、諸々のことがすべからく自然っていうのをベースにした感じで発達していくべきじゃないかなっていう気はしてますよね。
いつも何をやるにしてもどういう仕事、どういう暮らしぶりをするにしても、その中に自然っていうものをしっかり置いて、その感覚に基づいて判断するっていうことが僕は絶対必要じゃないかなっていう気はしてます。
その時に屋久島の位置というか在りようとしては、それがしっかり残ってる、それのエキスである原生っていうありのままの自然の姿。人が少しいじったりとかしてる自然ではなくて。
色んな自然の中のちっちゃいものからおっきいものまで、色んなものが関わりあって出来た世界をしっかり知って理解してるっていうのは、今言ったようなことの凄くおっきいベースになるんだろうなっていう気がします」