高齢化進む南大隅町の集落

鹿児島県の65歳以上の人口の割合を示す「高齢化率」です。
昭和60年は14.2%でしたが、年々上昇し、おととしはついに30%を越え、平成の間でおよそ2倍になりました。

高齢化が進む中、将来的に消滅する可能性がある集落を指す「限界集落」という言葉も生まれ、議論を呼びました。
その高齢化率が県内で最も高いのが、南大隅町で45.6%です。

深刻化する少子高齢化と南大隅町の住民はどう向き合っているのでしょうか?


南大隅町佐多の辺塚地区です。海と山に囲まれた自然豊かな地区ですが、30年前にはおよそ350人だった人口は、今では140人と、平成の30年で半分以下に減少しました。
高齢化も進み、今では人口のおよそ7割が65歳以上です。

集落にあった小学校は5年前に閉校。集落に住むただ1人の小学生は、およそ20キロ離れた佐多伊座敷地区の小学校までバスで通っています。
また、若い世代の多くが根占地区の会社や町役場で働いていて、日中、集落で若者や子どもたちの姿を見ることは減ったといいます。

「(若い人の)仕事場は縫製工場とか、役場とか。働きに行く年代の人はあんまりいないですよね」
「若い者がいないから、年寄りばっかり。若い人が帰ってきても生活ができないから。仕事がないから」


また、かつては集落に数件あった店も今では1つになりました。

南大隅町では集落の外に買い物に行くのが難しい高齢者の多くは、週1回訪れる移動販売車を利用しています。

そして、集落の診療所に週1回、医師が来ますが、住民の多くは車で1時間半かけて鹿屋市の病院に通っています。

(辺塚校区公民館 栗栖喜幸館長)「私がUターンで帰ってきたのが、(昭和)59年でした。そのころは人口も多くにぎやかでした。(今後は)ここがこれから人口が増えるというのは難しいと思います。今住んでいるみなさんが、楽しく過ごしてもらえる地域にしたい」

「時代の流れで減少していくのは仕方ないと思います。時代の流れをうまく利用しながら、今いる住民が、もっと生き生きと楽しく過ごしていけたら」


高齢化・人口減少の進む集落の機能を維持しようと、南大隅町では町内の13の地区に社会福祉協議会を立ち上げ、地区ごとに高齢者の見守り活動や高齢者が集まるサロンなどをつくろうとしています。

辺塚集落でも今月、地区の社協が立ち上がります。

(南大隅町社会福祉協議会 冨田義和・事務局長)「いろんな介護・福祉サービスが受けづらいという環境があります。デイサービスセンター、ヘルパーステーションについては、地域の方々が中心にやってもらう。そこは町介護福祉課と社協が支援する。そうすることで、地域におきた課題、ニーズなど、少しでも対応が、早い時間で解決に向けて協力しあえるのかなと」


その活動の拠点となるのが、閉校した小学校の跡です。

地区の高齢者の暮らしやすさにつながればと地元は期待しています。

(辺塚校区公民館 栗栖喜幸館長)「利用しないでいるというのが、もったいないな感じていましたけど、本当にうれしく思います。地区の方を楽しくすごせるように、地区の人みんなで、支えあうということが地区社協のテーマだと思います」


一方、南大隅町佐多伊座敷の島泊地区です。人口は80人あまりで、高齢化率は辺塚地区とほぼ同じおよそ70%。

今年2月から町内の13地区のトップを切って地区の社協を立ち上げ高齢者の見守り活動を行っています。

島泊地区で生まれ育った中村さつ子さん(65)は、見守り活動の大切さを実感しつつも、将来に不安を感じています。

(中村さつ子さん)「自分が今度は介護される立場じゃないかと思うんですよね。その時は、後ろを振り返ったら、誰もいないという感じでね。若い人は何人しかいない。佐多、南大隅町に若い人がどんどん住んでくれたらいいな、そういう町になったらいいなと思います」


国立社会保障・人口問題研究所が3月公表した2045年の推計人口は、南大隅町は2501人。2015年からの30年で3分の1に減るというショッキングなものでした。

平成の30年で減った人口はさらに減ると見られています。
平成の次の時代も避けられないこの課題とどう向き合っていくのか、住民の模索は続きます。

(辺塚校区公民館 栗栖喜幸館長)「だんだん少なくなって高齢者だけになるので、この辺塚という地域が、どういう具合になっているか。30年後どうですかね」
(辺塚地区の住民)「(今後は)特別、望みというのはないが、みんなが豊かで、生活ができるようだったら、それが最高だと思う」