創業90年超の精米所を1人で切り盛り 85歳女性 お客さんとの触れ合いを楽しみ
いちき串木野市の生福地区で草刈りに汗を流すのは松元チリ子さん、1938年生まれの85歳です。
のどかな田園風景が広がる地区の一角で、昔懐かしい精米所を営んでいます。
精米所で使われている精米機や籾摺り機は、1930年に創業したころから使われているもの。月に20人ほど訪れる常連客の注文に応えるため、今も現役で稼働しています。
チリ子さんは60年前に夫・新一さんと結婚。それを機に新一さんの家業だった精米業の手伝い始めました。
15年前に新一さんを病気で亡くしてからは、精米所を1人で切り盛りしています。
(松元チリ子さん)「父さん(夫)が元気な頃は2人でやってきたが、1人になってからはボチボチ」
チリ子さんの1日は、精米所の雨戸を開くことから始まります。精米機を稼働させる前には、機械のネジに緩みがないかしっかりと点検も欠かしません。
(松元チリ子さん)「機械が故障したり、ベルトが外れたり、切れたり、昇降機が詰まったりするのが大変」
長く使っている機械にはトラブルもつきもの。特に暑さが厳しくなる夏はベルトが緩みやすく、滑車から外れてしまうことも多いといいます。
チリ子さんはその都度、天井裏へのはしごを自分で登り降りして、機械の調整を行います。
(松元チリ子さん)「1回2回3回と上がってベルトをかけて、今度こそと思ったら、また外れる。何とかしないと、預かった品物を届けないといけない」
そして、機械を動かしながら、自分の目で精米のでき具合を確認します。
(松元チリ子さん)「一俵一俵米の質が違うから。(粒が)大きいものもあれば小さいものもある。水分の多いものもある。そういう時は気をつけないと」
この日精米所を訪れたのは、チリ子さんの小中学校の同級生松下国盛さん。「松元精米所でついた米が美味しい」と月に一度精米所を利用する常連客の1人です。
(松下国盛さん)「無人の精米機もあるが、やっぱりここに来て米をついてもらう。きれいに精米してくれるから」
精米所を訪れるたび、2人は幼い頃の思い出話に花を咲かせます。チリ子さんにとって楽しみなのが、お客さんとの触れ合う時間。元気の源にもなっています。
(松元チリ子さん)「あちこちの地域からニュースを聞たけり、会話をしてお茶を飲めることが楽しみ。来てくださるお客さんには丁寧な仕事をするようにいつも心がけている」
85歳になった今も1人で家業を守り働くチリ子さんに、娘の久理江さんは「いつまでも元気でぼちぼち頑張ってほしい」と話します。
(娘・竹之内久理江さん)「やっぱり長年の勘と、続ける力は大事だと思う。少し心配ではあるが、仕事をしていることが大事かなと思って見守っている」
精米業に携わって60年、これからもお客さんたちとの触れ合いを大切にしながら精米の仕事を続けていきたいと望んでいます。
(松元チリ子さん)「生き甲斐はなんだろうな〜、あーだこーだ言いながら毎日仕事ができること。この家でゆっくり過ごせたら良いと思う」