走るパワフル祖母に寡黙な祖父… 港市場と家族描いた小5の作文 鹿児島県長島町

MBCラジオで鹿児島県内の小学生・中学生が書いた作文を紹介する「私たちの作文」。60年以上続く番組です。

親世代、祖父母世代の方でも「子どものころ作文を読まれたことがある」という方がいらっしゃるかもしれませんね。

先日、今年度の優秀作品が選ばれました。最高賞の県知事賞に選ばれたのは、長島町の新鮮な海の幸と明るい家族に囲まれた心温まる作文です。

カラフルな、ひおうぎ貝。大きなサイズのナマコ。海の町ならではの新鮮な海産物が並びます。

(作文)「『おはようございます』『いらっしゃいませ』あちらこちらから聞こえる元気な声。今日は第4日曜日、えびす市の日だ。」

長島町立平尾小学校5年生の白濵蘭さん。蘭さんの作文は、県内の小中学生が書いた646作品の頂点、鹿児島県知事賞に選ばれました。

題材は、地元長島町の茅屋漁港で毎月開かれるえびす市。先月のえびす市にも、蘭さんの姿がありました。

(作文)「私の家族は、このえびす市で、祖父母が育てているひおうぎ貝と、祖父がもぐってとるうに、あわび、なまこなどを売っている。」

水産加工品、農産物の店、あおさ汁のふるまいなどで朝早くからにぎわいます。

(すえみさん)
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませと元気よく」

蘭さんは、保育園のころから店番を手伝っています。

(作文)「これまで何度も来てくれているお客様は、私の顔を覚えてくれているので少しは話ができる。それでも、きんちょうする。」

「初めて来たお客様には、祖母がこしらえ方や食べ方を教える。祖母は、お客様とすぐ仲良しになるから不思議だ。」

(客)
「おいしいウニを食べたことがない、山(側の地域)の人なので・・・」

(蘭さんの祖母 白濵すえみさん)
「どこから」

(客)
「都城から」

初対面の人でも、すぐ打ち解ける祖母の白濵すえみさん。その一方で・・・

(客)
「何年生?」

(蘭さん)
「ごねんせいです…」

(客)
「すごいね、がんばってね」

Q.店番は慣れた?

(蘭さん)
「まだ恥ずかしい」
「なんでそんなすぐ仲良くなれるの?」

(すえみさん)
「ここに来るお客さんはみんな友だち」

話し上手な70歳は、会場内をとにかくよく走ります。走る。また走る!フットワークの軽さには、理由がありました。

(すえみさん)
「地区対抗女子(駅伝)に出た」

なんと、すえみさんは駅伝ランナー。およそ35年前、県地区対抗女子駅伝の出水チームを支える存在でした。

(すえみさん)
「走らんとね、忙しいから。お客さんが待っているので」
「蘭さんも足が速い」

Q.将来は出水チームで走る?
(蘭さん)
「えへへへへ」

すえみさんとは対照的に、黙々と作業を続けるのは、蘭さんの祖父、輝記さんです。(蘭さんの祖父 輝記さん)
「(ナマコを)素潜りでとる。(素潜り歴は)40年くらいかな。(蘭さんが)前日からウニ(の殻)をむくのを手伝ってくれた」

(作文)「今日のえびす市のために、昨日、千個のうにのからを船の上でわった。私は、からから取り出した身についてるちいさなからを、ピンセットで取り除く手伝いをした。」

「うに千こで、やっと、ポケットティッシュくらいの大きさの箱で三十箱分になった」

Q.頼もしいですね
(輝記さん)
「かわいい」

(作文)「どの海産物も売るまでに本当に多くの作業があると思う。育てたりとったりするのは自然との関係もあるし、おいしさが伝わるように心をこめて商品にしなけらばならない。」

海産物が店に並ぶまでの大変さも学んだ蘭さん。えびす市の手伝いを続けるのには、作文のタイトルに答えがありました。

(蘭さん)
「ばあちゃんがいつも言っていることを題名に」

タイトルは、「また来月も」。祖母すえみさんがお客さんを送り出すときに必ずかける言葉です。

(すえみさん)
「(蘭さんが)慣れない手つきでがんばってくれるから、本当にうれしい。」
「元気で、人と接して話をして、少しでも身になっていけば、何より幸せ。涙が出てくる。」

(作文)「毎月のえびす市を待ってくれているお客様がいるから、私たち家族は張り切って作業ができる。よろこんでもらえて、パワーが出る。」

「来月も、またあのお客様、来てくれるかな。毎月、たくさんのお客様がえびす市に来てくれますように。」

お手伝いを通して、家族とつながることの喜びを作文で表現した蘭さん。感謝の気持ちでいっぱいです。

今月のえびす市は3月24日(日)開催予定です。