「来てくれてありがとう」虹の橋を渡ったペット 家族と同じように見送れる場所…離島でようやく
今や「家族の一員」とも言われるようになった犬や猫などのペット。県内でもペット専用の霊園や火葬場が増えつつありますが、離島にはこうした施設が無いところもあります。離島であっても、家族と同じようにペットを見送りたい。そんな願いを叶える取り組みが種子島で始まっています。
草木が植えられ、ドッグランも併設されたこちらの施設。中種子町に去年9月にオープンしたペット用の火葬場です。
(林洋司さん)「ペットを実際に飼っている人が、目の前でお骨を拾う時は、よほど大事にしてきたんだなと感じる」
ペット用の火葬場を作った、西之表市の林洋司さん(81)。自身も2匹のネコを飼う「猫好き」です。
鹿児島市で育った林さん。かつて父や祖父が暮らした種子島に12年前に移り住み、島で墓や庭用の石材店を立ち上げました。
(林洋司さん)「種子島に対する思い入れは、結構強くある。暮らしやすい、仕事しやすい。島に住み続けてきた理由の1つ」
林さんがペット用の火葬場をつくろうと考えたきっかけ。それは、「種子島にもペットの火葬場がほしい」という、島のペット愛好家からの声でした。
(林洋司さん)「ごみと一緒に焼却場に持っていき、一緒に焼却される。家族同様に過ごしてきた猫や犬が、そうなるのがいたたまれないという人が多い」「焼くだけの手伝いでもできれば」
ゴミ処理場入りまたはノイズ島内の家庭ごみなどが集まる種子島清掃センターです。ペットの死がいが持ち込まれるケースは、毎年20件ほどあります。ペットのための火葬場がない離島では、ペットが死んだ際、自宅の庭にそのまま埋葬するか、一般ごみと同じように扱うしかありませんでした。
このため、清掃センターでは、飼い主の思いに少しでも応えようと、職員が自主的に、ペットの死がいを一般のごみと別に受け取り、手作りの祭壇でまつった後にごみの焼却炉に入れています。
(種子島清掃センター 前田秀夫所長)「ちゃんとした箱に入れて、涙目で持ってくる人もいる。専用の施設がないから、持ってきたという話も聞くので、施設できて良かった」
種子島で野良ネコの保護活動をする吉岡裕美さん。ペットの火葬場を待ち望んでいた1人です。
吉岡さんは、病気の犬・猫を保護するケースも多く、死んだ時の対応に悩んいました。
(吉岡裕美さん)「本当に助かっている。林さんも動物が好きなので飼い主に寄り添ってくれる。すごく良い雰囲気で家族的な火葬」
この日、林さんのペット火葬場に、新たな依頼者が。愛犬の火葬を子どもたちと見守る中種子町の西田篤弥さんと妻・佳澄さん。西田さん一家が見送ったのは、雌犬のぴんちゃんです。
ぴんちゃんは、西田さん夫婦に3人の息子が生まれる前からともに暮らし、子どもたちの成長を見守るお姉ちゃんのような存在でしたが、がんなどの闘病の末、14歳で旅立ちました。
(西田篤弥さん)「幸せだったよ、がんばったね、来てくれてありがとう。息子たちより年上で見守ってくれていたのでお姉さんみたいな存在」
(佳澄さん)「鹿児島に渡る人もいるが、ばたばたすることなくゆっくりお別れまで過ごせて、良い見送りができたなと思う」
(長男・旺太朗くん)「ぴんちゃんの骨ってこんなに小さかったんだなと思った。今まで11年間見守ってくれてありがとう」
(林洋司さん)「ペットは家族だとみんな思っている。こういう施設が必要なのは間違なかった」
同じ悩みを抱えるほかの離島にも今後、ペットの火葬場を作りたいという林さん。家族と同じようにペットを見送りたいと願う、離島住民の思いに応えるための取り組みは続きます。