空港にある塔の上の巨大な丸い“アレ”15年ぶりの更新 役割は何? カメラが捉えたアレの中

こちら、鹿児島空港にある巨大な白い球体、見たことありますよね。
この物体、気象に関するものなんですが、15年ぶりに新しくなりました。私たちの普段の暮らしにも関わりのあるこちらの丸い物体。その役割や更新作業の現場を取材しました。

鹿児島空港にある塔の上の丸くて白い物体。巨大なサッカーボール?ゴルフボール?にも見える球体を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

高さ40メートルに設置された直径11メートルの球体。その正体は「空港気象ドップラーレーダー」雨と風を観測する装置です。

このレーダーを管理する福岡航空地方気象台の池亀孝光さんが装置の仕組みを教えてくれました。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「パラボラアンテナから電波を発射して、雨粒に反射したものを捉えて解析するシステム」

白い球体はアンテナを保護するカバー「レーダードーム」と呼ばれます。そのなかにあるアンテナで雨の降っている範囲や風の流れを観測しています。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「ドップラーレーダーというのはドップラー効果による。救急車が通る前は甲高い音だが通り過ぎると低い音に変化」

音を出す物体が移動することで聞こえる音が変化する「ドップラー効果」。ドップラーレーダーはこの効果を利用して雨が近づいてくるのか遠ざかっているのかを観測するレーダーです。

通常の気象レーダーは雨の範囲などを測るだけですが、ドップラーレーダーは雨が近づくのか遠ざかるのかを調べることで、雨だけでなく「風の動き」も観測できます。そのドップラーレーダーがなぜ、空港にあるのでしょうか?

背景にあるのが、今からおよそ50年前にアメリカで起こった旅客機事故です。激しい雷雨のなか着陸態勢をとっていた飛行機が風で滑走路に叩きつけられ、犠牲者が100人を超えました。

原因は、発達した積乱雲から吹く激しい下向きの突風、「ダウンバースト」

「空港気象ドップラーレーダー」は飛行機事故の原因となる「ダウンバースト」などを見つけ、より安全なフライトに活用するもので、日本では成田空港や羽田空港など主要な空港9か所に設置されています。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「データを航空機や管制官の方に情報を伝える。運航に役に立っている、安全のために」

空港のドップラーレーダーの役割は飛行機の安全を守るだけではありません。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「データは天気予報の数値予報に取り込まれ、役に立っている」

日々の天気予報にも観測したデータが使われ、予報精度の向上につながっています。この鹿児島空港のドップラーレーダーが、今月新しくなりました。

作業が始まったのは飛行機の離着陸が終わった午後10時。およそ15年ぶりの更新です。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「(アンテナは)24時間ずっと回る、15年も使うと電気が入っているので経年劣化する」

天高く伸びたクレーンから吊り下げられたロープを作業員たちが大きな球体、レーダードームに掛けていきます。そして・・・

ドームの中からパラボラアンテナの一部が見えました。

風を観測する装置ですが、更新作業の難敵は「風」。巨大なドームが風にあおられ振れたり回転したりすると、作業員に危険を及ぼすおそれがあります。

緊張感のある作業は続き・・・

無事、15年ぶりに新しくなりました。そして今回は特別に工事途中のレーダーのなかに入らせてもらえることに。

(記者)「サッカーボールのなかに入っている。こんなに大きい」

ドームの直径は11メートル、大型バスの長さほどあります。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「(Q.レーダーに入るのは貴重?)観測中は回って強い電波を発射しているので、入れない」

なかには組み立て途中のパラボラアンテナがありました。空港ドップラーレーダーのアンテナは7メートル。気象庁が使っている気象レーダーの倍近くあります。

飛行機の離着陸に大きな影響を及ぼす風を細かく観測するためにより大きなアンテナを使っています。更新されたレーダーではさらに精度が向上します。

(福岡航空地方気象台 池亀孝光・主任技術専門官)「今まで捉え切れきれなかった現象も捉えられるように、データの品質が向上する。航空機の運航に安全なものでありたい」

飛行機の安全を守るため風を観測するドップラーレーダー。私たちが空港で目にする丸い物体はこの先15年間、休まず働き続けます。