車いすで振袖「信じられないぐらいうれしい」レンタル晴れ着で医療的ケア児のハレの日祝う

今月は鹿児島県内の各市町村で「二十歳のつどい」が開かれました。今回は鹿児島市の女性が開発した振袖の話題です。寝たまま、座ったまま着られるもので、日常的に医療的なケアが必要な人にハレの日の喜びを届けたいと作られました。

(菜乃子さんの式典のあいさつ)「今を大切に当たり前を感謝し、日々楽しい時間を送っていきたい」

(施設利用者・職員・教員)「かわいい」「すごいきれいで素敵な女性になりそう」「ずいぶん雰囲気が大人っぽくなって見える」

鹿児島市の障がい者支援施設で行われた「二十歳を祝う会」。紺碧の振袖姿で参加していた浜村菜乃子さんは、「医療的ケア児」として日常的に医療的なケアを受けています。

879グラムで生まれ、生後間もなく、脳性麻痺、小児がんと診断された菜乃子さんは、2歳半から車いすを使って生活しています。

今回は、車いすでも着用しやすい特別な振袖を着て、会に出席しました。

この晴れ着を考案した堀之内香織さんです。洋裁師の岸尾キミ子さんとともに、医療的ケア児のための晴れ着製作に取り組んでいます。活動のきっかけとなったのは、看護師として15年間勤めた小児科での出来事でした。

(堀之内さん)「長期入院が多くて、なかな衣装を着せたりとかできなかったけど、自宅で七五三の衣装を着た子の写真を見せていただいて、着物の帯を巻くのも大変だったと話したことを思い出した。世の中に寝たまま着られる晴れ着がないのならば、私が作れるんじゃないかと」

寝たままでも着られる晴れ着のレンタル事業「ホーリーエンジェル」を2年前から本格的に始めた堀之内さん。これまでに医療的ケア児のためのドレスや袴など80着ほどを製作しました。

晴れ着は、一般的な振袖を上下の二部式に仕立て直して作っています。正面から両手を通し、右肩から脇にかけてはスナップボタン。脇の下からマジックテープで簡単に止めることができます。下は巻スカートになっていて、腰にある紐でサイズ調整が可能です。

看護師ならではの工夫も。

(堀之内さん)「式典は長時間になったりするので、途中で水分補給などしないといけない。脇からチューブを出せるようになっている」

(堀之内さん)「寝たきりであれば関節が硬くなったり、無理に着せると脱臼をおこしたりするようなことがあるので、負荷をかけずに着られるものが一番大事なポイント」「今までありがとう、これからも頑張ろうねっていう親子の思いというのが、この晴れ着を着てお祝いしていただければ一番うれしい」

「二十歳を祝う会」の当日を迎えました。

Q.普段、お化粧や髪の毛はどうしている?
(菜乃子さん)「あまりしないかも」

Q.朝どうだった?
(菜乃子さん)「めっちゃドキドキした。どんな感じになるのかまだ1回も着ていないから、すごくドキドキしている」

ヘアメイクを終えた菜乃子さんが初めて振袖に手を通します。少ない動作で着られ、身体への負担を軽減。帯の背になる部分は柔らかく、背中に当たっても痛くない工夫も。5分ほどで、車いすに座ったまま着替えることができました。

(菜乃子さん)「信じられないぐらいうれしい。あまり手が動かないけど、入っていかないという感じもなくスッと着ることができた」

(父・伸也さん)「きれいですね」「障害を持った子たちが着られるような着物があって着ることができて、本当にありがたく思っている」

実はこの振袖、菜乃子さんの母・麻紀さんが二十歳の時に着ていたものを堀之内さんが仕立て直したもの。親子の門出を祝う、一枚になりました。

(母・麻紀さん)「成人式の着物どうしようかな、もう無理、難しいかなとか。自分たちなりに祝ってあげたら別にみんなと同じような形でなくてもいいのかなとか、本当にいろいろ思ったけど。これでバッチリ」

菜乃子さんの晴れ姿を一目見ようと、近所の人たちが駆け付けました。

(ご近所さん)「菜乃子ちゃん、きょう頑張ってね」「とってもいいよ。あいさつもちゃんとしてよ」「goodだわ、すてき、きれいだね」

念願の晴れ着で、人生の節目を迎えた菜乃子さん。大切な一日になりました。

(菜乃子さん)「うれしいしか出てこない。こういうのを作ってくれる人がいるんだって、すごいなって感激したのと同じぐらい感謝している」「脱ぐのがもったいない、明日もこれで来ようかな」