種子島から「世界に一つのスーツ」を届ける新人女性フィッターの挑戦

「フィッター」という職業をご存じでしょうか?オーダーメイドでスーツなどを作る際に客の体型などを採寸し、体の特徴にあわせて補正しながら好みにあわせたデザインを提案する専門の仕事です。

種子島に今年、女性フィッターが誕生しました。その挑戦を取材しました。
南種子町にあるワーケーション施設の一角に、今年4月にオープンしたオーダースーツの専門店「TailorHOPE」です。

お手軽な価格の国産生地からイタリアやイギリスからの高級輸入生地まで500種類以上の生地が選べ、裏地やボタンの種類、えりやポケットの形なども自分好みのスーツを作ることができます。

店で採寸とデザインを選べば提携する宮崎の工場で仕立てられ、注文から40日ほどで届きます。

種子島では衣料品店が少なく、特にスーツなどを販売する店が限られていることもあり、4月に開店するとSNSや口コミなどで評判が広がりました。

この店でフィッターを務めているのが店長の西野亜由美さん(42)です。

(テーラーHOPE 西野亜由美店長)「家族はオーダースーツと聞いてウエットスーツだと思ったみたい『ふーん、サーファー多いしね』って反応だった。『あ、そっちのスーツ』って感じに」

西野さんは南種子町で生まれ育ち、地元で結婚して2人の娘を育てながら事務職の仕事をしてきました。もともと美容師志望でファッションの仕事へ興味があり、2人の娘が成長し島外への進学を決めたこともきっかけとなり、フィッターへの挑戦を決意。

今年2月から採寸などの勉強を始め、オンライン講座や県外での研修に参加し、スーツの知識をイチから学びました。

(テーラーHOPE 西野亜由美店長)「絶対に世界に1個だけ。その人に合わせたスーツができる、それを任されることが楽しみ」

この日の依頼はお気に入りのスカートに合う夏用のジャケット。既存の服に合わせて新たに服をデザインするというオーダースーツならではの依頼に対して、西野さんは一緒に色合いを見比べながら生地やデザインの方向性を決めていきます。

そして採寸。フィッターの腕の見せどころです。全身の細かいサイズや体のゆがみ、傾斜などの特徴を手際よく測っていきます。

当初はジャケットだけの予定でしたが、2時間ほどのデザイン選びの中で上下のパンツスーツに変更することになりました。依頼主も納得のいくデザインが決まったようで満足げな表情でした。

(西之表市から採寸に来店)「服は(鹿児島)市内で買っていたので、ゆっくり丁寧に教えてくれたのでなんとか作るところまで決まってほっとした」

(テーラーHOPE 風間辰広オーナー)「洋服を買う場合、島外に出て買う人が多かった。外に出るとお金も時間も使う、島内で気軽に自分の体にジャストフィットしたスーツを作れることを広めていきたい」

以前、注文した客にオーダースーツを手渡す日を迎えました。
注文した西之表市の冷水さんは、去年、長女が生まれたばかりで子どもを抱っこしたままでも動きやすいゆとりのあるスーツを希望していました。

そして試着。西野さんも少し緊張した表情で待ちます。

(オーダースーツを購入 冷水忠さん(西之表市))「すごくうれしい、うれしいの一言。子どもが生まれて子どもを抱っこできるような動きやすいスーツを作った。大満足です」

(テーラーHOPE 西野亜由美店長)「(渡す前は)ドキドキです。緊張、不安。オープンして間もないこともあり、お客さんが喜んでくれることだけを考えて一生懸命やっているだけ」

世界に一つだけの理想のスーツ作りを手助けするフィッター。「種子島をもっとおしゃれにしたい」という西野さんの挑戦は、始まったばかりです。

(テーラーHOPE 西野亜由美店長)「種子島でも働いてないお母さんの方が少ない。ビジネス以外でも自分の楽しみとしてもちゃんと出かけられるスーツ、女性も輝いていいんだよっていう感じ。私は女性の味方なので」