「辛いときこそ上を向いて」北海道の女性が車いすで九州一周に挑戦
北海道の女性が今、車いすでの九州一周に挑戦していて、鹿児島を走っています。最終的な目標は日本一周。挑戦を続ける女性の思いを取材しました。
午前6時、周囲がまだうす暗い中、女性が手際よくテントをたたみ、車いすの準備を始めます。
北海道在住の中環さん(51)。中さんは、おととしから車いすで日本を一周するチャレンジを始めて、これまで沖縄本島や四国一周など1200キロ以上を走ってきました。
(中環さん)「焦って走らせると、溝にはまったり(車いすの)故障や転倒に繋がる。焦らないように大丈夫と自分に言い聞かせているが、ちょっと不安」
そして今回、九州一周に挑戦を先月20日に開始。福岡から大分、宮崎と九州を時計回りに巡っていて、先月30日から鹿児島に入り、今月19日にスタート地点の福岡まで戻る予定です。
1か月ほどかけておよそ1300キロを走る計画で、毎日40キロから50キロを目標に走り続けています。3日は、いちき串木野市から阿久根市まで、国道3号をおよそ40キロ北上しました。
(中環さん)「車いす漕いでいる時、上り坂なんてずっと下向いている。ずっと下向いていて頑張れと言われたら、顔を上げて『どうも』と応える。しかめっつらはできない。だから辛くて下向いている時は、上向いた方が良いと思った」
中さんは14年前、37歳の時に車で信号待ちをしていたところ、別の車に追突されて左半身に麻痺が残り、車いすでの生活を始めました。
(中環さん)「障害者になったばかりの時は、自分が一番悲劇のヒロインだみたいな、どん底だと思ったけど。色んな人にあったらそうじゃないと、その考えのまま棺桶に入るのは、もったいないと思った」
日本中を旅したいという夢を、障害を理由にあきらめたくなかったと話す中さん。特別な競技用の車いすではなく、生活用の車いすでの挑戦にこだわり、各地をまわる中で出会った人たちから集まった「応援金」を、引退した介助犬や障害のある子どもの支援などに寄付しています。
(中環さん)「いっぱい距離を走ったら、比例して(応援金が)増えると思った。(道中)預かったお金を引退した介助犬のベッド代やフード代に渡したいなと。障害がある子どもたちがスポーツに限らず、チャレンジするときに、これがあったできるのにというものを。誰か助けてと手を挙げた子にあげたい」
車いすでの日本一周を支えるため、全国から応援に駆け付けてくれる仲間や家族、旅先で出会う人に支えられていると話す中さん。
4日は長島町や出水市を進み、熊本に入る予定で、残りおよそ半分となった九州一周までの挑戦を通じて感謝を伝えたいと話します。
(中環さん)「元気をもらったとか、すごいとか言ってもらえるが、それは全く逆。みなさんに助けてもらっている。本当に申し訳ないと思うがありがたい。だから逆なんです。私がみなさんに助けてもらっているし、みなさんに勇気や、やる気や元気もらっている。ありがとうございます」