作曲・編曲家 吉俣良さん 大河ドラマ『篤姫』作曲の原点は鹿児島【MBC賞】

地域社会の発展に貢献し、今後の活躍が期待される団体や個人に贈られるMBC賞の受賞者を紹介するシリーズ。3回目は、作曲・編曲家の吉俣良さんです。

(吉俣良さん)「座ってメロディーが降ってくるのをずっと待っていて、出来た!と思ったらここに来て、(ピアノ弾く)浮かんだメロディーを記録する」

鹿児島市出身の作曲・編曲家、吉俣良さん(64)。東京を拠点に、数々の人気ドラマや映画の音楽を手がける一方、音楽イベントのプロデュースや自身のコンサートを開催するなど、多方面で活躍しています。

代表作は、2008年に放送された鹿児島県が舞台の大河ドラマ「篤姫」。吉俣さんはメインテーマや挿入歌を手がけ、大ヒットの一翼を担いました。

(吉俣良さん)「テレビのために作った曲を僕が演奏して何が楽しいんだろうと思っていた。でも篤姫のキャンペーンでピアノを弾いたら客がすごい数いて、その人たちがうれしそうな顔で俺のピアノを聞いてくれる姿を見て、人生観が変わった」

吉俣さんは、音楽を通して鹿児島の認知度向上や観光客の誘致に貢献したとして、県知事特別表彰を受賞。薩摩大使や鹿児島市ふるさと大使にも任命されました。

活躍の原点は、高校時代。鹿児島中央高校吹奏楽部に所属し、部長として部活動に打ち込みました。

(吉俣良さん)「音楽大学も行っていないのに独学でなぜN響にスコアを書けるかというと、吹奏楽部のときに自分が見ていたスコアが起源。鹿児島で吹奏楽部に一生懸命だったということが、結果的にプロとして大河ドラマまでくる道筋の一番の原点」

東京でプロとして活動を始めてからも、鹿児島の存在は自身の音楽活動に欠かせないといいます。

(吉俣良さん)「自分の音楽に影響しているのは鹿児島の空気。篤姫の時もそうだったが、何かやろうと思ったときには桜島から始まる。自分の中でのルーティン。桜島に行くと、よし、曲が書けるかもと思わせてくれる何かがある」

県内でのイベントプロデュースも精力的に行っています。今年初開催された奄美群島日本復帰70年と世界自然遺産登録を記念した「ほこらしゃ奄美音楽祭」では、総合プロデューサーを務めました。

(観客)「すごく良かった。涙がでる」「感動、贅沢。オーケストラと島唄のコラボ良かった」

さらに、かごしま国体の総合開会式では、開幕を告げるファンファーレや炬火点火の際の音楽も作曲。

実は吉俣さん、51年前に鹿児島で開催された太陽国体の開会式で、吹奏楽隊の1人として小太鼓を演奏しました。当時13歳だったあの時の感動が、今でも忘れられないと話します。

(吉俣良さん)「作曲家として同じ地に、鴨池陸上競技場に戻ってくるなってロマンがあるな。自分の曲が流れるのを今回は会場で見ることなるが、感動すると思う。当時を思い出す、選手団が並んでいる景色とか今だに覚えているから」

子どもの頃に触れた特別な景色や音楽。今度はその担い手として、鹿児島の若者たちが音楽文化に親しむ環境を作りたいと思いを強くします。

(吉俣良さん)「音楽を通してなるだけ鹿児島の人が文化に触れやすい、音楽に触れやすい場、そういった音楽が根付くことに協力できれば」