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H2Aロケットエンジンのバルブ製造に携わる鹿児島県出身者「はやぶさ」きっかけに目指した宇宙の仕事(2023年8月25日放送)

H2A47号機の打ち上げは、今年3月のH3初号機の打ち上げ失敗の影響で、5月から今月に延期されていました。対策に取り組んだ鹿児島出身のエンジニアを取材しました。


(六反田蓮さん)「自分で造った物を宇宙に送り出すことが夢だったので、今かなっている」

三菱重工業入社4年目の六反田蓮さん。日置市出身の21歳です。日本の基幹ロケット、H2AとH3で使われる第2段エンジンの製造に携わっています。

3月に種子島から打ち上げられたH3。しかし、第2段エンジンに着火せず、打ち上げは失敗しました。第2段エンジンでショートが起き着火しなかったとみられています。
H3の第2段エンジンはH2Aでもシステムが一部同じだったため、5月に予定されていたH2A47号機の打ち上げは今月に延期されました。

(六反田蓮さん)「(H3の)指令破壊という言葉を聞いた時はとても悔しかった。次の打ち上げに向けて、今自分にできることは何なのか考えて確実にやりたい」

秋田県大館市にある三菱重工業の試験場です。先月、H3の第2段エンジンの燃焼試験が行われました。試験チームは六反田さんを含めおよそ15人。打ち上げ失敗の原因とみられる「着火装置のショート」への対策の有効性を確かめ、成功すればH2A47号機のエンジンにも反映させます。

(六反田蓮さん)「(H2A47号機で)打ち上がる衛星のニュースを見ていた。自分へのおすすめのニュースが出てくるが、宇宙のことが多く出てくる」

大気圏に突入する小惑星探査機「はやぶさ」。2003年に内之浦から打ち上げられ、2億キロ離れた小惑星イトカワから岩石などを採取し7年後、地球に帰還しました。

幼いころから宇宙に興味があったという六反田さん。小学3年の時、幾多のトラブルを乗り越えたはやぶさの姿を見て「ロケットエンジンを造りたい」という夢を抱きます。
鹿児島工業高校で機械設計などを学んだあと、三菱重工業に入社。担当する燃料の注入量を調節する「バルブ」は、H2AとH3の第2段エンジンで使われています。

燃焼試験当日。エンジンから吹き出す炎の温度は最高3000度になるため、周辺に燃え移らないよう水をまきます。

エンジンから吹き出す炎。上空から見ると、炎の勢いで砂煙が上がっているのが分かります。
自分が造ったバルブは正常に動くのか…。およそ100メートル離れたコントロールセンターでモニターを見つめます。

試験成功の条件は、液体水素と液体酸素燃料が50秒間燃え続けるかどうか。エンジンは想定通り作動し、点火。無事、条件となる50秒間燃焼し続けました。

(六反田蓮さん)「今回の燃焼試験で自信につながった。ロケット開発をする人たちや衛星を造る人たち、応援してくれる人たちの思いをすべて乗せるのがロケットエンジンなので、(H2A47号機の)打ち上げでも思いに応えられるような打ち上げを見せてほしい」

ふるさと鹿児島から打ち上げられた「はやぶさ」をきっかけにロケットエンジニアとなった六反田さん。今回のH2Aの打ち上げ成功を見守っています。