山の神に願う屋久島伝統「岳参り」九州最高峰1936m宮之浦岳 高校生も初参加(2023年6月15日放送)

屋久島で先月末、山にまつる神に集落の繁栄などを祈る伝統行事「岳参り」が行われました。九州最高峰の宮之浦岳を目指し、今年は初めて高校生が参加しました。


夜が明ける前の午前4時。宮之浦集落にある益救神社に住民らの姿がありました。参拝のあと松明に火をともすと、近くの海岸へ。体を清めたあと、竹筒に浜砂を詰め込みます。山に祀られる神に捧げるためです。

岳参りは屋久島で500年以上前から続く伝統行事で、山のほこらにまつる神・一品法寿大権現に集落の繁栄や安全を願います。宮之浦集落では毎年春と秋に岳参りをしていて、九州最高峰、標高1936メートル、宮之浦岳の山頂を目指します。

集落の住民に混じって高校生として初めて参加したのは、屋久島高校3年日高朔さん(17)です。授業の研究テーマに岳参りを選びました。

(日高朔さん)「空気感だったり、参加してみないと分からないことを学びたいと参加した。楽しんでいきたい」

台風が近づき雨が心配されるなか、午前6時、集落の代表など9人の登山が始まりました。

(日高朔さん)「すごい快晴。天気が不安だったが、晴れてくれて良かった。爽快です」

登山道ではヤクシマシャクナゲの花が参拝者を迎えます。頂上まで片道3時間。午前9時、全員が宮之浦岳のほこらに到着。所願と呼ばれる代表者が祝詞を読みあげます。途中でほかの2か所のほこらにも参拝しました。

Q.何をお祈りした?
(日高朔さん)「無事に進学できるように。あと研究がしっかりまとまるように」

午後2時、登山口まで降りてきました。山と人が住む里との境界線となる登山口で里のものを食べることで厄落としをする「サカムケ」の儀を行います。

(日高朔さん)「終盤は雨に降られて、きつかったが、無事に大きなけがもなく下山できてうれしく思う」

日高さんは岳参りの体験を通じて、何を感じたのでしょうか。

(日高朔さん)「山は今も昔も神聖な領域が人々にあって、たとえ時間が経っても人々の心の中に大切なものがあるからこそ、いまも続いていると思った」

「サカムケ」のあとは、集落の人たちが山から帰った人を迎える「マチムケ」です。高校、小中学校などを訪れ、岳参りの報告をし、シャクナゲの花を渡します。シャクナゲの花は山の精霊が宿るとされ、岳参りの時のみ採ることが許されています。

(日高朔さん)「岳参りが本当に地域の生活とすごく根付いていると再確認した」

(宮之浦集落在住 木原幸治さん)「ひとまず安心した。コロナでずっと行けていなかったので気になっていた。どんどん若い人が関わってもらって屋久島がもっと盛り上がってくれたらいいな」

山の神に集落の繁栄を願う伝統の岳参り。次は秋に行われます。