砂浜にごみ、路上駐車…観光客回復も暮らしに影響 奄美の人気観光地が作った“独自ルール”
奄美大島では今、コロナ禍で落ち込んだ観光客が回復しつつあります。経済効果が期待できる一方で、今、問題なのがマナーを守らない観光客による暮らしへの影響です。
観光と暮らしを両立するために、「独自のルール」をつくった集落があります。
奄美大島・大和村の国直集落。120人ほどが暮らす小さな集落です。砕けたサンゴでできた白い砂浜が広がる国直海岸や、かつて防風・防火のために植えられ、今では人気の撮影スポットになっているフクギ並木。大和村で有数の観光地となっています。
今月10日、集落で開かれたウォーキング大会。島の内外からおよそ200人が参加し、東シナ海を一望する宮古崎を目指しました。大会は、集落の住民が自分たちで運営し、参加者に手作りのカレーをふるまいました。
(奄美市から参加)「集落がいろんな催しをして、奄美大島が活性化されていい」
(大和村から参加)「集落の人たちで団結して協力してやることで、国直に来る機会が増えるので、とても素晴らしいと思った」
奄美大島の観光客数は、2019年に53万人と過去最多に。コロナ禍で落ち込んだものの、おととしは41万人台に回復し、去年はこれをさらに上回ったとみられています。
集落では、観光客の増加に伴って暮らしへの影響を心配する声もあがり、コロナ禍前の2019年に観光客向けの独自のルールをつくりました。
車の運転は時速20キロ以下でゆっくり走行する、午後10時以降の花火は禁止するなど7つのルールです。
集落では、訪れる観光客に看板を設置して呼びかけてきました。しかし…。
「観光が賑わって活発な地域活動ができている中で、観光の負の面というのが出てきました」
集落のウォーキング大会の後に開かれた、暮らしと観光の共存を考えるフォーラムでは、住民からルールが守られていない現状が報告されました。
(集落の住民)「小さい集落なので歩くのに時間はかからない。(観光客が)車を狭い道路に止めると、車の行き来が困る。それらの(ルールは)守ってもらいたい」
国直集落で行ったアンケート調査では、住民の88%が観光客を歓迎する一方で、47%が生活への影響を感じていると回答。
その影響を見てみると、路上や砂浜のゴミの増加が29%、スピードの出しすぎや路上駐車などの交通ルールの違反が24%、騒音が18%でした。
この日のフォーラムでは、ルールを守ってもらうため、QRコードなどでルールを確認できる仕組み作りを求める意見も上がりました。
(観光客)「海のようにルールを守ってもらわないと水難事故とか起きてしまう。(ルールは)大事にしていきたい」
集落での生活など体験型観光を企画するNPO法人TAMASUの代表で、住民へのアンケート調査を行った中村修さんです。
(中村修さん)「ありきたりな景勝地を見るだけではなく、地域の人たちの暮らしぶりを知る。地域の人たちと交流をしたいコアな観光客も多くいる」
観光の楽しみ方も変わっていく中、観光客への最低限のルールは必要だと考えています。
(中村修さん)「観光によって地域を疲弊させたり、そういったことは決してあってはいけない」
大和村も、国直集落のような独自のルールづくりを広げていくべきと話します。
(大和村企画観光課 藤村雄樹主査)「集落の住民がまず安心して生活できる中で、観光客も迎え入れる体制づくりが大事なのではないかと考えている」
コロナ禍を経て、急速に回復しつつある観光客。観光と暮らしの両立をどう実現するか?模索が続いています。