沖永良部島で初の日米訓練 かつては米軍基地があった島「恩恵もある」「複雑な心境」
離島の防衛を想定した日米の共同訓練が今月11日まで、沖永良部島で初めて行われました。島では防衛の強化に期待する声もある一方、複雑な思いを抱える住民もいました。
鹿児島県和泊町の笠石海岸に11日、沖合いのアメリカ軍の揚陸艦から偵察ボートで日米の隊員100人が上陸。島に敵がいる想定で、小銃を手に周囲を警戒していました。
日米共同訓練「アイアン・フィスト」は、離島の防衛を想定して先月から九州・沖縄で始まり、県内では今月11日まで、沖永良部島で初めて行われました。
知名町のグラウンドでは、訓練に反対する住民らが見つめる中、日米の輸送ヘリ3機が相次いで飛来し、60人ほどの隊員が降り立ちました。隊員たちは潜伏する敵との戦いを想定し、やぶの中を通って近くのキャンプ場へ向かい、戦闘訓練をしました。
(知名町民20代)「訓練の成果が出ないよう、平和で安心して暮らせたらいい」
鹿児島を含む南西諸島の防衛などを研究する中京大学・佐道明広教授です。
(中京大学・佐道明広教授)「より実戦に近い形での訓練になっていると思う」
県内の離島を中心に相次ぐ日米の訓練。海洋進出を活発化させる中国を念頭に、今回のような一般の施設を使った実戦を意識した訓練が増えているといいます。
(中京大学・佐道明広教授)「普段、軍事利用していない民間の港湾にしろ、空港にしろ、実際に訓練の使用実績があると、軍事利用が可能な施設に変わる。実戦を想定した訓練が行われる可能性は極めて高くなっている」
知名町では、アメリカ軍の輸送ヘリの見学や交流ができるイベントも開かれ、多くの人が訪れていました。
(アメリカ軍)「沖永良部島はいいところ。ここに来ることができて幸せ」
アメリカ軍の統治下にあった1950年から、1972年まで軍の通信基地があった沖永良部島。50年余り経て、離島防衛の訓練という形で再びアメリカ軍が島と関わることに住民は…。
(和泊町民20代)「いざとなったら守ってもらう。恩恵もあると思う」
(知名町民70代)「戦後生まれで、気がついたら米軍がいた。相手を攻撃するのはどうかと思うが、防衛のためなら(日米訓練は)いい」
(和泊町民70代)「穏やかな島だが、いざ何かあれば標的になり得る。複雑な心境」
複雑な思いを抱える住民もいる中、防衛強化は日米連携のもとで着実に進みつつあります。