奄美で始まった海底熟成ワイン、カギは波と水温「地域の新ビジネスに」 海守る工夫も 鹿児島

ワインを海底に沈めて熟成させるというプロジェクトが、奄美大島と加計呂麻島の間にある大島海峡で始まっています。
地域の新たなビジネスにかける、関係者や地域の思いとは?

奄美大島と加計呂麻島の間に挟まれた大島海峡。
先月30日、スペイン産のスパークリングワインと赤ワイン、フランス産の白ワインあわせて500本が漁船に積み込まれ、ゆっくりと海底へ沈められました。

大島海峡で始まったワインの海底熟成。
中心となって手がけるのは、2018年から瀬戸内町の広報業務を請け負っている東京の広告会社アイスリーです。

プロジェクトの中心メンバーで、町のPR事業などを担う田仲亜希さん(45)です。6年前に初めて瀬戸内町を訪れまちづくり事業に携わり、その時に自然の豊かさに魅了されたといいます。

(海底熟成ワインプロジェクト 田仲亜希さん)
「町の人たちが自然環境が豊かなところなのに、なにもないと話していて、そんなことはない。この環境をいかして、いろいろなことができるのではとかんがえた」

大島海峡は、入り江が多く、外海に比べて波が穏やかなことなどから戦時中は軍港として使われていました。

冬場の海水温も20度前後と高く、年間を通して安定していることから、今ではマグロの養殖が盛んに行われています。

田仲さんによりますと、ワインの熟成も20度前後が最適で、波も穏やかな大島海峡は「香りや味を高めるのに最適な条件が揃っている」といいます。

また、豊かな海を守るため、海底に沈めるワインを入れる金属製のラックを独自に開発。海藻を付着させやすくして、新たな藻場にする考えです。

(海底熟成ワインプロジェクト 田仲亜希さん)
「海で沈めることなので、海の環境に配慮するのは絶対。地元と環境と共存するようなビジネス作りを目指している」

今回、海底熟成ワインの取り組みに協力した地元の漁師や瀬戸内町の職員も、地域活性化のきっかけになればと期待を寄せています。

(瀬戸内町の漁師 恵祐也さん)
「ワインを新しい事業をするにあたり、もっと瀬戸内町の海を知ってもらえたらいいなと」

(瀬戸内町水産観光課 禧久幸太・水産振興係長)
「水産業以外にも、観光や飲食業につながることは、町全体が活性化され、盛り上がっていくのではないか」

これまでに大島海峡の海底に沈められたワインはあわせておよそ900本。熟成期間はおよそ5か月間で、4月ごろからでネット販売が始まります。