「もったいない」から始まった種子島茶の実でつくるオイル 耕作放棄地だけが生む「宝の実」
こちらのビン、何か分かりますか。
実は種子島の茶畑で採れた、お茶の実から作られた油です。
あまりなじみのないお茶の実ですが、この油が誕生した背景には種子島で暮らす女性の地域へのある思いがありました。
透き通る濃い黄金色・・・
種子島の茶畑で採れる茶の実から作られた「茶の実オイル」です。
ドレッシングなど料理のほかにも、抗酸化作用のあるビタミンEなどが豊富なことから美容オイルとしても使えます。
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「家庭用の絞り器を買って、みんなでやってみた。なぜか絞りたかった。そこに(実が)あるわけだから、絞りたいなと思った」
開発した種子の実オイル工房の代表日笠山昭代さん(65)です。
西之表市役所の職員を5年前に定年退職。2020年に友人らと5人で工房を立ち上げ、本格的にオイルづくりを始めました。
業務用の機械を導入して、絞り方や温度などの研究を重ねること1年。試行錯誤を経て、茶の実オイルが完成しました。
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「この実をつぶして粉にして絞る、2か月近くかかる。全部手作業なので手間もかかる」
作業を支えるのは地元の女性たちです。
茶の実の収穫が始まるのは毎年9月ごろ。40代から70代まで10人ほどの仲間に人手が必要な収穫や皮むきなどを手伝ってもらっています。
茶の実が収穫される西之表市の古田地区は明治時代に静岡からの移住者らがお茶づくりを始めました。
島の温暖な気候をいかし、毎年3月末ごろに茶摘みがはじまる、日本で最も早い新茶の産地の一つとして知られています。
通常の茶畑には、茶の実はなりません。
オイルの原料となる実が収穫されるのは、生産をやめて放置されたいわゆる耕作放棄地です。
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「(普通の畑は)花も咲かない。咲かせないというか剪定を短くしている。放棄されると自分たちも生きようとして実をつける。実はつけないようにするのが良い茶畑らしい」
市によりますと、2017年には市内の茶農家は55軒ありましたが、生産者の高齢化などを理由に2021年には25軒まで半減。
日笠山さんは市の職員時代に農業振興に携わった経験から、耕作放棄地となったおよそ1.5ヘクタールの茶畑の管理を農家から譲り受け、茶の実を収穫するための畑として再生させています。
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「茶畑が放棄されることに、もったいないという気持ちがすごいある。茶の実が採れるのであれば、再活用には一番いいと思っている」
古田地区の校区長で茶農家の窪田良二さん。
日笠山さんの取り組みに動かされたひとりです。
(茶農家 窪田良二さん)
「どこでタイミングで実ができるか調べるべき。(栽培を)やめて1年目2年目なのか。そういう実証園にしていけば」
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「しっかり勉強しないと繋げられない、技術を」
茶の実オイル用の茶畑を増やすために今後、地元の農家と協力して栽培や管理を行うことが決まりました。
(茶農家 窪田良二さん)
「耕作放棄地の話は胸が痛い。安定的に茶の実が採れるように、茶畑が良いサイクルで回るように仲間も増やしながら、茶畑を提供してくれる離農した農家の協力も必要になってくる」
耕作放棄地となった茶畑を「宝の山」と話す日笠山さん。
「もったいない」という思いからはじまった取り組みが地元の農家を動かし、100年以上続く茶畑の再生を目指す挑戦へと広がり始めています。
(種子の実オイル工房 日笠山昭代代表)
「休耕茶畑にしか実らない実なので、そこを本当に生かして新たな商品づくり」
茶の実オイルは45ミリリットル3780円からで種子の実オイル工房のホームページから購入できるほか、西之表市のふるさと納税の返礼品にもなっています。