• 鹿児島発 コロナに負けない!
  • 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活や経済に暗い影を落としています。一方で、先が見えない不安の中、この逆境に立ち向かう人たちがいます。このシリーズでは、新型コロナに負けまいと頑張っている人や企業などを紹介します。

老舗ぢゃんぼ餅店の挑戦

創業140年以上の老舗ぢゃんぼ餅店が「冷凍ぢゃんぼ餅」を販売

今回は、創業140年以上の老舗ぢゃんぼ餅店がコロナ禍に始めた新たな挑戦です。

焼き目がついた丸い餅に甘い醤油ダレをからめた鹿児島名物・ぢゃんぼ餅。餅にささった2本の竹串は、武士が腰に2本の刀をさす姿になぞらえたもので、2つという意味の「両」と「棒」という字をあわせて「両棒」と呼ばれるようになったといわれています。

鹿児島市磯地区で創業から140年を超えるぢゃんぼ餅の老舗・平田屋。現在は5代目の平田勝彦さんと両親、姉弟の家族5人で店を切り盛りしています。

注文を受けてから先代の父・正勝さんと5代目の勝彦さんが阿吽の呼吸で餅を仕上げていきます。竹串も手作りで、作り方は創業以来、変わっていないといいます。

そんな老舗も新型コロナの影響に苦しんできました。書き入れ時の夏に店のすぐ前の磯海水浴場がコロナ対策として2年連続で閉鎖されたのです。
(5代目・勝彦さん)「県外のお客さんは半分以下。夏に海で泳いだ後に甘いぢゃんぼ食べて帰るお客さんが多かったが、海水浴場が泳げなくなったので、やっぱ夏もすごく減って」

 

開発は苦難の連続

コロナ禍の苦境を乗り越えようと始めることにした新たな取り組み。それは、インターネットでの「冷凍ぢゃんぼ餅」の販売です。

きっかけは以前から店に寄せられていた「じゃんぼ餅を県外にも届けてほしい」という声でした。″ありそうでなかった″冷凍ぢゃんぼ餅。しかし、開発は苦難の連続でした。

冷凍であっても創業以来守り続けてきた平田屋の味を変えるわけにはいかない。冷凍時間や焼き加減を変えるなど、試行錯誤は1年弱続きました。そしてようやくたどりついた納得のいく味。それを実現させたのが、マイナス40度まで温度が下がる冷凍庫です。

マイナス40度で餅とタレを別々に急速冷凍することが味を保つポイントでした。さらに、冷凍するとぢゃんぼ餅の特徴でもあるコゲにえぐみが出ることから少し早めに焼き上げるなどの工夫もしました。竹串も店と同じものを使いました。

冷凍ぢゃんぼ餅の開発は苦戦続きでしたが、どうしても成功させなければならないこんな理由もありました。

(5代目・勝彦さん)「(冷凍庫が)数百万。完成もしてないのに買わないといけない。けっこうな決断でした」

(いずみさん)「冷凍庫が来た時点で支払いがどんどんくるわけですからね、がんばらないと、支払いが追いかけてきますもん、それがお尻を叩いてくれた」

 

「これからはぢゃんぼ餅を食べて鹿児島を思い出してほしい」

こうして完成した「冷凍ぢゃんぼ餅」は、まず餅を皿に移し替えてラップをかけずに電子レンジで1分20秒加熱。タレは湯煎で3分、または電子レンジで1分30秒加熱します。

初めての発売日に選んだのは両棒を表す「2」が揃った2022年2月22日。50食限定でしたが注文が殺到し、わずか1日で完売。県外客から写真付きでメッセージも届きました。

ぢゃんぼ餅を自宅で。コロナの逆境が鹿児島で長年、親しまれてきた味を楽しむ新たなスタイルにつながるかもしれません。

(先代・正勝さん)「じゃんぼ餅は日持ちがしないというのが一番のネックだった。(息子は)がんばってますよ」

(5代目・勝彦さん)「鹿児島のここに来て、海を眺めながら桜島を眺めながら食べるっていうのがぢゃんぼだと思ってた。これからはぢゃんぼ餅を食べて鹿児島を思い出してほしい」

冷凍ぢゃんぼ餅は一度に冷凍庫に入る分しか作れないため、今後も数量限定で販売していくそうです。次の発売日が決まり次第、お店のホームページやSNSで知らせるということです。