普及したインターネット

きょうのテーマは、平成に入って急速に普及したインターネットです。個人が世界とつながりライフスタイルを大きく変えたインターネット。普及した経緯やネットを活用した地方の取り組みなど萩原記者の報告です。


今や生活の一部となったインターネット。
日本でも普及するきっかけとなったのが、平成7年に発売されたアメリカ・マイクロソフト社のパソコン基本ソフト、「ウィンドウズ95」です。

初めてインターネットへの接続機能が搭載され、主に大学や研修施設などでしか使われていなかったインターネットが急速に広がりました。
総務省の統計では全国のネット利用者は平成17年に8500万人に達し平成25年には1億人を突破しました。


一方、ネットへの接続サービスを提供するプロバイダ。鹿児島市のシナプスは、平成7年、県内初のプロバイダとして、サービスを始めました。
当時、大手のプロバイダが鹿児島での採算性を疑問視する中、髙橋美博会長は事業を立ち上げました。

総務省によりますと、去年3月末現在、ネット回線を利用できる世帯の率は、全国平均の99%に対し、鹿児島は86.5%と全国最低です。ネット回線を実際に利用している人も全国平均の80.9%に対し、鹿児島は67.9%と全国最下位です。

(髙橋会長)「鹿児島の場合は通信環境が悪い。山が多い。離島を含めて(南北)600キロある。それと高齢者県、そういった前提条件があるということ。そういった意味ではパソコン普及が遅れている」

ネットの普及では遅れている鹿児島ですが髙橋会長は、過疎高齢化が進む地方にとって、活路を見出すツールにもなると話します。

(髙橋会長)「時間や距離のハンディキャップをなくしてきている。今の若者はどこにいてもいい。あまり群れない人が多いと思う。そうしたら社会の構図やあり方がまったく変わってくると思う」


人口7600人あまりの錦江町。65歳以上の高齢者の率は43.8%と県内トップクラスの高さです。
次の時代を担う若者や子どもたちが希望を持てる未来を作ろうとネットを活用し、IT企業などを誘致するMIRAIづくりプロジェクトを去年の春から進めています。

(柏崎真司プロデューサー)「こちらがサテライトルームの一つである旧コンピューター室です。緑のきれいな芝生ときれいな海が見える部屋になっているので、すごくリフレッシュしながら働いていただきました。」

廃校になった中学校の校舎を企業のサテライトオフィスとして使えるようネット環境などを整備し、IT企業などを誘致。政府が進める「地方創生」の一環として総務省の「お試しサテライトオフィス事業」に選ばれ、これまで、東京や台湾など国内外の16社がこのオフィスを試しました。

(柏崎氏)「仕事とプライベートへのメリハリがすごくついたんです。そしてネット環境が整っているのでこちらでも東京と同じような形で仕事ができるので、仕事の生産性・効率性もすごく上がったというふうにおっしゃっていました」

取り組みは実を結び、全国展開している東京の人事コンサルティング会社「あしたのチーム」が来月、進出第一号の企業としてサテライトオフィスを設け、業務を始めます。

(あしたのチーム 鯨岡務執行役員)「地方にしかいない人材がいると思っていまして、何らかの事情で地元を離れられないとか、何か一つの節目に地元に戻って、地元に何か貢献しようという方は結構いらっしゃるので、それなりに人を採用できるというのは、これまでサテライトオフィスを進出してて、実体験として学んでいるところもありますので、そういったメリットがある」
(柏崎氏)「錦江町は課題が解決する、企業さんについてはビジネスがここで生まれる、そういった錦江町にとっても企業にとっても「WIN(総合利益)」が取れる」


地方からも世界中の情報にアクセスできるインターネット。元グラフィックデザイナーで現在、鹿児島市でカフェを営む後潟淳さんは、ネットが普及する前にその可能性をいち早く感じた一人です。

平成8年、後潟さんは鹿児島の観光やグルメなどの情報を発信するサイトを立ち上げました。県内でこのようなサイトを作ったのは、後潟さんが初めてだったとみられています。

(後潟淳さん)「今でいえば(ネット上の)ショッピングモールみたいな感じでいろんな店や企業を紹介しようとサイトを立ち上げて、かごしまTOWNという形が当時は珍しかったんじゃないかな」

その後、現在に至るまで日々、進化を遂げているインターネットですが…。

(後潟さん)「ネットに使われるんじゃなくて、ネットをどうやっていい風に使うかっていうのを考えていかないといけないんじゃないかなとは思っています」


仕事や生活が便利で豊かになった一方で新たな犯罪を生み出したほかネットの使いすぎで生活に支障が出る「ネット依存」など様々な社会問題も浮き彫りになっています。

(髙橋会長)「今の若者はネットの中で…生まれた時からありますから。デジタル弱者というのが10年すればほとんど存在しなくなるんじゃないですか。世界やみなさんがインフラとしての重要性がやっぱり大きくなっていくことは間違いないと」

平成の時代、情報通信に「革命」をもたらしたインターネット。これからの社会や私たちの暮らしをどう変えていくのでしょうか。