豪雨災害から1か月 伊佐市・さつま町 河川改修で住民「油断」リスクと備え

1か月前に県北部を襲った豪雨災害についてお伝えしています。
今回被害の出た伊佐市とさつま町は、15年前の県北部豪雨でも浸水した地域でした。いわゆる激特事業で川内川の大規模な改修工事が行われたこともあり住民からは「油断していた」という声もきかれます。
改修工事後も残るリスクや備えについて、緒方記者の報告です。


先月9日から10日、活発な雨雲は川内川流域を覆うように停滞。さつま町では総雨量が550ミリを超え、73棟に浸水被害が出ました。

宮之城虎居地区にあるこちらのラーメン店は30センチほど浸水しました。

(さつま路 羽子田孝子さん)「平成18年の(北部豪雨で)堤防もよくなった。まさか水がくるとは思わなかった」

(緒方記者)「さつま町虎居地区です。15年前の北部豪雨では川内川が氾濫し、この電柱の黒い線まで水が到達。今回は氾濫はなかったものの、側溝からの水でこの一帯は浸水しました。」

2006年7月の県北部豪雨。虎居地区は川内川の氾濫により、ほぼ全域が浸水し、500棟以上に被害がでました。
その後、国は「激特事業」で375億円かけ、人工的に流れを分ける分水路や2キロにわたる新しい堤防を建設。2006年と同じ量の雨に耐えられるとしています。

しかし、先月の雨では川内川の氾濫はなかったものの、虎居地区では排水が追い付かず、一帯に水があふれる内水氾濫が発生。再び浸水しました。

(虎居馬場公民会 中野幸男会長)「(堤防が)これだけ高くなったから安心していた。内水は全部ここに集まる。」

(福岡峰人さん)「夜中に不意をつかれた。うちの妻が(近所の人を)起こして回った」

車の修理会社を経営する福岡峰人さんです。
先月10日午前4時ごろ、川内川河川事務所からの要請を受け、川の水が住宅側に逆流するのを防ぐため、排水路の門を閉めました。しかし、その後も浸水の高さは上がり、福岡さんの車2台も水没。

川沿いで周りより低く、浸水しやすい虎居地区では、大雨が予想される場合、河川事務所が事前にポンプ車を用意しますが、予想外の大雨となった今回は出動が遅れました。
午前3時に時間雨量119ミリを観測し内水氾濫が始まりましたが、ポンプ車による排水が始まったのは午前6時ごろ。

福岡さんは、自分の地域の災害リスクを知っておく必要性を改めて感じたといいます。

(福岡さん)「(ここに住む人は)雨が降ったときには危険だと思っておかないとだめ。内水対策ができない限りは今の状況と変わらないので情報をとって早く避難するしかない」


国交省のまとめでは、今回、川内川流域にある9つの観測所のうち6か所で、2006年の県北部豪雨を上回りました。

伊佐市中心を流れる川内川の支流・羽月川でも、激特事業で国が想定した設計上耐えられる水位「計画高水位」を超え、下流では堤防が一部壊れました。

15年前の豪雨を経験した住民からも「油断していた」との声がきかれます。

(伊佐市民)「(県北部豪雨のあと)新しい橋ができて安心していたが関係なかった」


川内川と羽月川が合流する伊佐市の下殿地区です。


2006年の豪雨では、当時暮らしていた100人のほぼ全員が避難しました。先月の大雨で、川は氾濫危険水位を超えましたが、避難した人は84人中8人でした。

(下殿自治会・堂園孝志会長)「堤防ができたおかげで安心して生活ができるようになったが、災害から身を守るための防災を情報交換しながら対応したい」

去年まで川内川河川事務所の所長を務めていた国の九州地方整備局安部宏紀統括防災官です。先月の大雨は、去年、大規模な氾濫がおきた熊本の球磨川のような状況になってもおかしくない、危機的な状況だったと話します。

(国交省九州地方整備局・安部宏紀統括防災官)「何とか持ちこたえたのが現実。九州地方整備局も非常態勢まで入り、(去年の)球磨川と同じような状況を想定しながら対応していた」

安部防災官は、川内川は改修工事によって、耐えられる水量が増えた一方、仮に想定を超える大雨で堤防が決壊した場合には、以前より災害リスクが高くなる可能性があると話し、早めの避難を訴えます。

(安部防災官)「小さな堤防のときは、あふれてもその高さからの水の勢い、例えば薩摩川内市は屋根の2階ぐらいの堤防の高さになってるので、その高さから水が一挙に流れてくる。万が一の場合の災害の大きさはどんどん大きくなっている。ハード面だけでは今の異常な気象状況には対応できない。これは日ごろ違うなという感じたら、直ちに避難してもらいたい」

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