【防災 私の提言】京大・矢守教授「自分の避難スイッチを」
9月1日は「防災の日」です。防災について専門家らに聞くシリーズ「防災 私の提言」1回目は、防災心理学などが専門の京都大学・矢守克也教授です。
(矢守教授)「平成7年の阪神・淡路大震災は大きな転換点のひとつでした」
京都大学の矢守克也教授、58歳です。避難する際の自分の判断基準をあらかじめ決めておく、「避難スイッチ」の考え方を提唱しています。
出身地の大阪で1995年に経験した阪神・淡路大震災の経験が、防災に関する意識や避難スイッチを思いついた原点だと話します。
(矢守教授)「自分が住んでいるところが被災地になった、という経験は生まれて初めてだった。『救援活動は消防や自衛隊のすること』という考えが、『市民も頑張る』という意識に変わったのがあの震災」
地震、火山、大雨など、様々な災害リスクを抱える鹿児島。今の時期、特に注意が必要なのが大雨・台風です。今月11日から10日間、県内で続いた大雨では、避難生活が長期間にわたった人たちもいました。
矢守教授は、避難所以外の避難先を確保しておく大切さを強調します。
(矢守教授)「長期の避難になると、体育館の堅い床の上で過ごすのは大変。安全とハザードマップで確認できる人は、自宅2階を避難場所に考えるのも大事。親戚・知人宅を避難先とする可能性も探る必要がある」
避難を判断する上で目安となるのが、自治体からの避難情報です。
しかし、矢守教授は、行政が発表する避難情報に「100点満点はない」とした上で、特に長期にわたる場合、「いつまで避難すべきか、自分で判断する力を養っておくこくことが大切」と強調します。
(矢守教授)「100点満点と全員が思えるような避難情報が出せるわけがない。行政の出す情報はあくまでも目安。自分にとってリスクをおかしてでも帰宅するのが得か損か考える。判断する力をつけるべき」
そこで、矢守教授が提唱するのが「避難スイッチ」。自分が避難を判断する基準をあらかじめ決めておく考え方です。ポイントは、「自分で得た情報」「体感したこと」「周囲からの声かけ」の3つをあげます。
(矢守教授)「第1は情報を利用すること。例えば、甲突川のそばに住んでいる人なら、水位を事前に調べておいて、3mの水位をチェックしたら逃げると決めておく」
(矢守教授)「2つ目に避難スイッチに使えるのは、自分が見たり聞いたり体感できること。例えば、田んぼが水に浸かり始めたら逃げると決めておく」
(矢守教授)「3つ目は周囲からの声かけ。スマートフォンを見て情報チェックは難しいという人もいる。(危険な時)声かけしてくれる人を確保しておく」
いつ、どこで起きるか分からない災害。自分はどう避難し、命を守るのか。普段から自分事として考え、備えておくことが大切です。