今週も、西郷さんが遺した教え、「西郷南洲遺訓」から紹介しています。
今日は、第32条「謙虚さをもち、慎み深く行動せよ」という教えです。
正しい道を行おうとする者は、世の中からもてはやされるような「偉業」というものを、
世間と一緒になって、むやみに褒め称えたりはしないものである。
宋の時代の偉大な学者であり政治家だった司馬温公は、
「寝室の中で妻と密かに語ったことでさえ、他人に聞かれて困るようなことはない」
とおっしゃられた。
この言葉から、「独りを慎む」という心得の真意を、推察するべきであろう。
それは、「誰にも見られていないところでも、慎みの気持ちを忘れず行動する」
ということである。
ことさらに人をあっと言わせるようなことをして、
そのひとときだけ良い気分になって悦に入るのは、未熟な人のすることで、
くれぐれも戒めるべきである。
西郷さんは、人を驚かしたり、注目を集めようとしたりして作り出した「見せ掛けの功績」に惑わされ、本質を見失ってしまう危険性を指摘しています。
本当の偉人、立派な人物は謙虚に自分自身を磨く人であって、これみよがしに自慢したりはしないし、何より、その見かけの結果が問題ではないかと言うのです。
途中「寝室の中で妻とひそかに語った」という内容がありましたが、西郷さんが妻と語った寝室の逸話があります。
坂本龍馬を西郷家に招いた慶応元年のこと、屋敷があまりのあばら屋であることに驚いた龍馬が夜、床に就こうとすると、西郷さんと妻イトの会話が聞こえてきました。
イトは「我が家は雨漏りし、困っています。お客さんがおいでのとき、面目ないのでどうか早く修理してください」と言うと、西郷さんは、「今、日本中が雨漏りしている。我が家の修繕などしていられない」と答えたそうです。
こちら、いかにも西郷さんらしいエピソードですね。
明日は、西郷南洲遺訓の第33条をお送りします。