マスク不足解消に“技術の力”を
マスクが手に入りづらい状況が続く中、南さつま市のものづくり企業が困っている人たちを”技術の力”で支えようという取り組みを行っています。
設計図のデータをもとにプラスチックなどの材料を溶かして立体的な物を作ることができる3Dプリンター。最近は家庭用の機器も3万円ほどから販売されているというこの機械を使って作られたのは、2種類の部品です。
その部品を使うとマスクやフェイスガードを簡単に作ることができます。
(宮原隆和社長)「マスクがなくて困ってるって話がいっぱい聞こえてきたので、我々ものづくり産業でもお役に立てないかと考えた。」
この部品を開発したのは、南さつま市加世田宮原のシステム開発会社「エルム」の宮原隆和社長(69)です。
DVDなどのディスクの傷を修復する装置は世界トップシェアを誇り、農業から宇宙産業まで、幅広い製品を開発している「エルム」で、およそ50人の従業員を束ねる宮原社長。
今年に入ってから3Dプリンターを活用した部品の設計を独学で学びました。
そして、新型コロナウイルスの感染拡大によるマスク不足を受けて、各家庭で役立ててほしいと、マスクとフェイスガードの部品を自ら開発したのです。
(宮原隆和社長)「これは、家庭にあるキッチンペーパーですね。」
使い方はこうです。
折りたたんだキッチンペーパーの両端を留め具となる2つの部品で挟み、穴にゴム紐などを通して立体的になるように形を整えるとマスクの完成です。
そしてもうひとつのこちらの部品は、クリアファイルなどを挟み込み、ホッチキスでとめて荷造り用のひもを通すと…簡単にフェイスガードができます。
(宮原社長)「家庭内感染で、隔離した人と話すときにもこういうのが欲しいし、歯医者とかあらゆるところで必要になってくる。」
宮原社長は今月、2つの設計図をホームページで無料で公開しました。すでに100件ほどダウンロードされているといいます。
自ら試作を繰り返して完成させ、無料公開した設計図。その根底には、ものづくりに関わる技術者としての熱い思いがありました。
(宮原隆和社長)「企業の原点は世の中の役に立つか立たないかだと思うんですね。世の中をよくするも悪くするもものづくりの力にかかってると思います」
なお、エルムでは地元・南さつま市の子どもたちにものづくりの楽しさを知ってもらおうと、来月にも市内5つの中学校に3Dプリンターを寄贈するそうです。