「発酵食は自分で未来をつくっている感じ」30歳、激務で体を壊して出会った発酵食…味噌・麹づくり教室を開く女性 鹿児島
みそやしょう油など日本の伝統食と深い関わりがある「発酵食」。「自分で未来をつくるのが発酵食」と、手作りする教室を開いて魅力を伝える女性がいます。
鹿児島県いちき串木野市に住む発酵料理研究家の塩田亜耶子さん(46)です。味噌作りなどの講座を開いたり、こだわりの発酵食品を販売したりしています。
おととし、いちき串木野市の中心部、旭町にオープンさせた「発酵食Lab直売所」。並んでいるのは全て手作りの発酵食品です。
麦に黒豆、ひよこ豆と色々な種類の味噌。お湯で溶かすだけで味噌汁ができるみそ玉に…紫芋や地元のサワーポメロと合わせた自家製甘酒のドリンク。甘酒も味噌も麹から手作りしています。
(塩田さん)「もともと食いしん坊なので、ひとつの地域の食べ物よりは、いろいろおいしく食べたいと思ったなかで、どの地域にも保存食ってある。その保存食をきっかけに発酵食に繋がっている」
丁寧に作られた発酵食にはファンも多くいます。
(買いに来た人)「シンプルにおいしいって思ったから。何も考えずに食べて、身体が喜ぶものがおいしいものだし」
大阪出身の塩田さん。大学卒業後、東京で会社員として働いていましたが、2007年に激務で体調を崩してしまいます。「発酵食」との出会いは30歳の時に経験した病気でした。
(塩田さん)「まだ30歳で若かったので、何をしてもどんなものを食べても体調管理できている気がしていた。気付かないうちに手の骨にがんができていて。このままの生活をしていたら、よろしくないよというきっかけをくれた」
自分のからだと向き合う中で、食の大切さを痛感。さまざまな自然食を学ぶうちにたどり着いたのが「発酵食」でした。
(塩田さん)「食を管理しながらも、世界各国のおいしいものを食べたいと思ったのが発酵食に出会ったきっかけ」
都内で味噌づくりなどの教室を運営していましたが、何も知らない新たな土地で自分を試したいと一念発起。2013年に薩摩川内市の地域おこし協力隊として、甑島で3年間活動。現在、いちき串木野市に移住し、店や教室を開いています。
塩田さんが教える発酵食の教室「発酵食Lab」には、年間1200人もの人が学びにきます。この日の講座は「米麹仕込み」。発酵食のなかでも上級者向けということですが、鹿児島市や長島町、曽於市など県内各地から集いました。
米麹は蒸した米に麹菌を付着させて繁殖させたもので、味噌や醤油、みりんなどの原料になるほか、肉、魚、野菜など素材の旨味を引き出す調味料としても使われます。
材料は、いちき串木野産の無農薬のうるち米と麹菌の元となる種麹とシンプルですが、作り方は少し大変…。蒸した米を種麹と混ぜ合わせ、麹菌の活動に適した温度を維持するため、電気毛布でくるみます。何度も温度をチェックしてようやく2日後の朝出来上がります。
発酵食は生き物。出来上がっても管理に気を配ってと、参加者に呼びかけました。時間はかかりますが、完成までの育てる過程が楽しく、塩田さんは自分も一緒に育っていく「子育て」にたとえます。
(受講者)
「季節とか温度とかで毎回違うのが面白い」
「(味噌作りなど)子どもと一緒にできたり伝統を教えてあげられる」
この日、米麹作りの講座を受けた4人。温度管理のため自分で仕込んだ米麹を容器に入れ、布でくるみ、赤ちゃんを抱くように帰って行く姿が印象的でした。
時間がかかる発酵食づくりは、「自分で未来を作る」経験だと塩田さんは話します。
(塩田さん)「料理ってその時食べるものを作るけど、発酵食は違って、完成するまでに“じらし時間”がある。今の楽しみを作るのではなく、先の喜びとか先のおいしさとか先のうれしさを作る行為を今してるんだ、というのが自分で未来を作っている感じがして。それが自由だし、自分で未来を切り開いていけるのは貴重な経験。それが私にとって発酵食の1番の魅力」