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海外種のいない「世界のクマゾーン」 国内最後の1匹も… 平川動物公園50年目の課題(2022年10月14日放送)

鹿児島市の平川動物公園はきょう14日で開園50周年です。園についてお伝えしているシリーズ、2回目は、動物たちを取りまく課題についてです。

第1回はこちら


開園50周年を迎えた平川動物公園。国内最多が飼育されているコアラ館や、人気者のキリンがいるアフリカの自然ゾーンなどおよそ15のエリアで、135種類、およそ1000匹の動物が出迎えてくれます。

平川動物公園の福守朗園長です。毎日園内を歩き、動物の様子を確認したり来園者にその生態について説明を続けています。

園内には、少し静かなエリアがあります。「世界のクマゾーン」です。
1991年にドイツとカナダからやってきたホクトとカナ。南国・鹿児島に暮らすホッキョクグマとして人気を集めていましたが、ホクトは7年前、カナは2年前に高齢のため死にました。

(福守園長)「(かつては)多くの方が来ていた。今でも自由に入ることはできるが、ご覧の通りホッキョクグマはいないので皆さん素通りされる」

空のままの展示室には、カナが大好きだったというおもちゃの丸太や、思い出の写真などが置かれています。さらに。

(福守園長)「今は休止中と書いているが、マレーグマの写真が残っていますね。先月まではマレーグマがその辺りに出ていた」

先月、マレーグマのハニイが病気のため死にました。このため「世界のクマゾーン」には現在、日本に生息するエゾヒグマと二ホンツキノワグマの2種類しかいません。

過剰な捕獲や環境破壊による希少動物の減少に伴い、動物の国際取引を制限するワシントン条約などが強化され、海外から新たな個体を迎えることは難しいのが現状です。1991年のピーク時には186種類いた動物は、3割減り、現在135種類です。

今後、園では国内で1匹しか飼育していないベンガルヤマネコやトキイロコンドルのほか、高齢のホオジロテナガザルなど、8種類ほどが姿を消す可能性があります。

(福守園長)
「あれがベンガルヤマネコ。(国内に)オス1頭ですから、この先どう考えても繁殖は難しい」「この子がいなくなるということは、日本国内からベンガルヤマネコがいなくなることを意味する。せめて今ここにいる間は幸せに暮らしてもらいたい」

一方、繁殖に向けた取り組みも続けています。
国内のほかの動物園と連携を強化しペアとなる個体を迎えることで、今年は、国内でも飼育数が少なくなっているアシカの出産に6年ぶりに成功。生息地が減りつつあるシンリンオオカミも4年ぶりに出産し、5匹の赤ちゃんたちはすくすくと育っています。

開園から50年。福守園長は動物を取り巻く環境の変化とともに、動物園のあり方も変わりつつあると話します。

(福守園長)
「珍しい動物を少しでもたくさん展示するというのが動物園のステータスと考えられていた時代はあったが、時代は変わり、今は必ずしもそうではない。珍しい動物をたくさん見たいというのは、人間の立場に立った見方」
「ただ動物が可愛いでしょうというだけでなく、野生動物が置かれている現状を理解してもらえるよう情報を発信することが動物園や動物園に勤める者の役割」

動物に触れ学ぶだけでなく、人間との共存の在り方についても考える場所になればと話す福守園長。開園50年を迎えた平川動物公園で取り組みが続いています。