8・6豪雨から28年 「想定超える災害に備える」
49人が死亡・行方不明となった「8・6豪雨」から28年です。
当時、氾濫した甲突川の改修工事は進みましたが、専門家は、近年頻発する記録的大雨で再び氾濫するおそれもあると指摘します。
1993年8月6日。長雨に局地的な集中豪雨が重なり、鹿児島市では、稲荷川、新川に続いて甲突川が氾濫。市内の広い範囲が浸水しました。死者48人、行方不明者1人。住宅の浸水被害は1万2000棟に上りました。
(お菓子司もとやま 元山次男さん)「もうすごかった。ここは180センチぐらい水が上がったといえば、みなさんびっくりされますよね。」
鹿児島市草牟田の甲突川沿いで菓子店を営む元山次男さん(67)です。あの日は配達のため店にはいませんでしたが、川からあふれた水が店を襲い、1階部分が浸かりました。
災害後、甲突川の改修工事が行われましたが、元山さんは、8・6豪雨のような氾濫が再び起きかねないと懸念しています。
(お菓子司もとやま 元山次男さん)「災害にあったことない方は(改修工事を)これだけしているから(水があふれ)出ることはないという人もいるけど、もういつ起きてもおかしくないと思う。」
災害後、新川は川幅を広げる工事などは終わりましたが、現在も、橋の架け替え工事が続いています。
稲荷川は、本流とは別に水を海に流す水路を作る工事が、予算が確保できず、止まったままとなっています。
甲突川は、県が7年間でおよそ390億円をかけて川底を深くする工事などを終えました。
甲突川は上流の郡山から錦江湾に水が流れるまで2時間半かかるとされていて、8・6豪雨では1時間に63.5ミリ、3時間で146ミリの雨が降りました。
改修工事によって1時間に110ミリの雨に対応できるとした上で、8・6豪雨と同じ1秒に700トンの流量にも耐えられるとしています。
(鹿児島地域振興局 新田福美河川港湾課長)「河川改修工事としては、川底を掘り下げる工事、川幅を確保する工事をした。」
当時、甲突川の改修を担当した鹿児島地域振興局の新田福美河川港湾課長は、工事は進んだものの、過信することなく、想定を超える雨に警戒してほしいと話します。
(鹿児島地域振興局 新田福美河川港湾課長)「近年の雨の降り方、今年も北薩豪雨がありましたし、昨年も球磨川で想定を超える雨が降っております。だから甲突川でも、いつ想定を超える雨が降っても全然おかしくない。」
鹿児島市では、2016年の台風16号で鹿児島市で1時間に120ミリの雨が降ったほか、県内では近年、大雨が相次いでいて、去年の7月豪雨では鹿屋市で109.5ミリ、先月県北部を襲った記録的大雨では、薩摩川内市で110.5ミリを観測しました。
河川災害などについて研究している鹿児島大学の齋田倫範准教授は、近年、記録的大雨が相次ぐ中、改修工事の済んだ川でも氾濫リスクは高まっていると話します。
(鹿児島大学理工学研究科 齋田倫範准教授)「住民は河川が整備されたことで水害がなくなると錯覚しているが、想定した流量を超えるような雨が降ると、氾濫のリスクは当然高まるし、氾濫することはあり得る。強い雨が増えてきているのでリスクは当然上がっている。」
その上で日頃からハザードマップなどで周囲の状況を知り、いざという時の早めの避難行動が必要だと訴えます。
(鹿児島大学理工学研究科 齋田倫範准教授)「どういうところに水が集まりやすいかで避難の経路も変わる。早めに避難しないと出遅れたら避難が困難になってしまうことも出てくる。」
鹿児島市がホームページで公表している防災マップです。
色のついた部分は、大雨で、川が氾濫したときに浸水するエリアを示しています。
一方こちら(右)は8・6豪雨で、浸水した地域です。現在、鹿児島市が想定している浸水地域と、8・6豪雨で被害の出た地域はほぼ同じエリアで、鹿児島市は28年前と同じ規模の被害を想定しています。
(鹿児島地域振興局 新田福美河川港湾課長)「地形的な条件は8・6豪雨の当時と全然変わってないので、もし想定を超える雨で氾濫した場合は8・6豪雨と同じような場所が浸水する。」
今年も8・6豪雨の雨量を超える記録的な大雨となった鹿児島。
28年前の災害や、自分の地域のリスクを知り、今後、起こりうる災害に備えることが大切です。