震度5強観測の地震から1年
シリーズ地域防災です。鹿児島湾を震源地とし、鹿児島市で震度5強を観測した地震が発生してからきょうで1年です。その後も発生した鹿児島湾を震源地とする地震はことし1月を最後に起きていませんが、専門家は予断を許さないと指摘しています。現状や、地震への備えなど、道山記者の報告です。
鹿児島市喜入町です。
土がむき出しになった斜面は1年前に起きた震度5強の地震の爪あとです。
(喜入町民)「できるだけ家財道具のそばにいないようにしている」「怖い。携帯の(緊急地震速報)聞いてトラウマになった」
去年7月11日、午前11時56分、鹿児島湾を震源地とするマグニチュード5.3の地震が起きました。
震度5強を鹿児島市喜入町で観測したほか、震度5弱を鹿児島市下福元や指宿市、南九州市で観測。1人が軽いけがをしました。
このグラフは、この地震の前後に鹿児島湾を震源地とした体に感じる震度1以上の「有感地震」が起きた回数です。震度5強の地震があった去年7月と翌8月をピークに減少しました。
今年は1月の3回以来、起きていません。
(鹿大・中尾茂教授)「今のところ順調に活動は下がっている」
鹿児島湾などの地殻変動を研究する鹿児島大学の中尾茂教授です。地震活動は低下しているものの、詳しいメカニズムは分かっておらず、今も予断を許さない状況だと話します。
(鹿児島大学中尾茂教授)
「(活動が)低下傾向の中、7月11日に震度5強が起きた。このまま減少すればいいが、また地震が起きる可能性もゼロではない。危険なところはどこか再認識しておけば、実際の地震で身を守れる」
去年の震度5強の地震は、震源地が人の住む場所に近かった上、震源の深さが10キロと比較的浅かったのが特徴でした。
先月18日、大阪府北部で起きた最大震度6弱の地震は震源が都市部の直下で深さは13キロ。
この地震では女子児童が建築基準法に違反した小学校のブロック塀の下敷きになって死亡し、ブロック塀の危険性が全国的な問題となっています。
県内の学校でもブロック塀のひび割れや耐震対策の点検が行われ、一部で補修や撤去が進んでいます。しかし、危険なブロック塀があるのは、学校だけではありません。
(喜入町の福迫さん夫婦)「これが崩れると困るだろうなという気はする」
鹿児島市喜入町の福迫さん夫婦の家は中学校の通学路沿いにあります。道路に沿ったブロック塀は高さが1.5メートル、長さがおよそ10メートル。設置したのはおよそ50年前で去年の震度5強の揺れでは目立った被害はありませんでしたが、鉄筋が入っているかどうかは分からず、不安だと話します。
(福迫さん夫婦)「(業者が)鉄筋が入っているようなこと言ってたが、どうだったかな?」「業者じゃなきゃ分からない」「中学生が通るから危なくないようにしないといけない。要はこの高さですよね。補修するなら、もっと短く(低く)したほうがいいんでしょうね」
ブロック塀を撤去したり補修する際にネックとなるのが費用です。
県内の土木業者によりますと、福迫さんの住宅の場合、撤去には10万円前後がかかるとみられています。
行政による費用の補助制度は県内では和泊町にしかありません。
県内の一部の自治体からは「ブロック塀は個人の財産であり、補助が適切かどうかは慎重に考えるべき」との声も聞かれます。
また、街に危険なブロック塀がどれだけあるのか、行政が実態をつかめていない現状もあります。
(鹿児島市建築指導課吹留徳夫課長)
「通常建物(住宅)を建てる場合、建築確認という行政チェックが入るが、ブロック塀は建物のあとに作られるため、行政チェックがなかなか入らない」
地震が起きた際、人の命を奪いかねないブロック塀。いつ強い揺れの地震が起きるかわからない中、危険な塀の実態をどう把握していくかは課題として残されたままです。