【防災 私の提言】鹿大・井村准教授「ハザードマップを“読み解く”」
防災について専門家に聞くシリーズ、今回は、自然災害を研究する鹿児島大学の井村隆介准教授に、災害時の危険個所や避難施設などが載った地図、ハザードマップの活用法について聞きました。
(鹿児島大学 井村准教授)「激甚化していることは間違いない。これだけ続くと異常気象ではなくて、これが普通だと思わなくてはいけない」
鹿児島大学の井村隆介准教授。地質学が専門で地震・火山について研究していますが、土砂災害などさまざまな自然災害の現場を調査し、命を守るためにどのように備えるべきなのか、大学の講義やメディアを通じて発信しています。
井村准教授が避難を考える前提として必要な情報と話すのが、ハザードマップです。
(井村准教授)「鹿児島市中央地域のマップです。草牟田小学校は57mとか、後ろに括弧書きでmが書いてある。これは標高です。万が一、津波などが来たときに、そこの避難所の標高がどれぐらいなのか事前に知ることもできる。」
(井村准教授)「普段の何もないときにハザードマップを読み解く。あるいはみんなで見てみることをきちんとやって、(災害時に)いろんな情報をもとに、それぞれがきちんと行動を取ることが大事」
では、「ハザードマップを読み解く」とはどういうことなのか。
鹿児島市の防災マップでは、河川の氾濫などによる浸水被害の想定は、水に浸かる深さによって緑から紫までの4段階で示されています。
しかし、この色の違いからは、単に想定される浸水の深さだけでなく、その場所のリスクの大きさや、避難が必要なタイミングの違いも読み解くことができるといいます。
(井村准教授)「紫色の地域の人たちは青色の地域よりも早く行動しなければいけない。」
(井村准教授)「土砂災害の警戒区域では、黄色のエリアの人よりもオレンジのエリアの人は早く行動を移さなきゃいけないと、そういう色分けになっていると思ってほしい。」
(井村准教授)「ここは危ないけどここは安全ではなくて、行動しなければいけない順番が入っていると考えてもらった方がいい。ハザードマップを読み解くとはそういうこと」
鹿児島市では、土砂災害によって建物の損壊や住民に危険が及ぶ可能性がより高い「土砂災害特別警戒区域=レッドゾーン」として、今年4月までにおよそ3100か所が指定され、ハザードマップも大幅に改定されました。
地図に掲載される情報は頻繁に更新されるため、定期的に見て最新の情報を確認しておくことも大切です。
さらに井村准教授は、住民が最新のマップを活用できるよう、行政には勉強会などを開いて周知を図る機会を増やしてほしいと話します。
(井村准教授)「(震災の前に)東北には津波防災のマップは完全にあった。だけど、あっただけでは命が守られない。行政も使ってもらわないと意味がない。そのために何をしなければいけないか、もっと考えてほしい。そうすると、もっとわかりやすいマップ、地域にフィットしたマップ。そういうものができてくる」
ただ、ハザードマップには避難の際に大切になる様々な情報は載っているものの、あくまで一つの「想定」であり、それを上回る被害が発生することもあるとして、いざという時には自分の判断で素早く避難できるように、平常時に身の回りの災害のリスクや避難について考えておくことが大切になると話します。
(井村准教授)「鹿児島で起こる災害をよく知って、そのときに適切な行動を、そのときに最善と思える行動を早く取ることが大事。」
(井村准教授)「行政の情報が出たら逃げるではなく、もっと自分自身で考えて、これは危険だぞと思って、自分自身で行動してもらう方にシフトしていかないと、本当の意味で命は守られないだろうなと思う」