本格的なシーズン前に 台風の備えを
過去の災害の教訓からいざという時の行動について考える「防災スイッチ」、今回のテーマは「台風」です。
先月、奄美地方に接近した台風6号は速度が遅かったため、交通や生活物資を運ぶ物流などの面で1週間近く、奄美地方の住民生活に影響を与えました。これから秋にかけて迎える本格的な台風シーズン前に、事前の備えについて考えます。
去年9月、非常に強い勢力で鹿児島県内に接近した台風10号。気象庁が最大級の警戒を呼び掛ける中、県内では1人が死亡、14人が重軽傷、住宅など1300棟あまりが被害を受けました。
防災工学が専門の九州大学・三谷泰浩教授は、地震などと違って、台風はいつ来るか予測できるとして、事前の備えの重要性を指摘します。
(九州大学 三谷泰浩教授)「台風はいつくるか分かるので、家まわりの確認が大切。懐中電灯とか3日分の食料、水の確保、コロナ感染予防としてマスクや消毒剤は用意したほうがいい」
去年の台風10号が接近する前には、防災用品を販売するホームセンターに人々が殺到。養生テープなどが品薄になる事態になりました。
あの時の不安を解消しようと、こちらの住宅では。
(住人)「もともと雨戸自体古くなっていたので、換え時かなと」
取り付けているのは雨戸のように窓ガラスを覆う外付けのシャッターです。工事を請け負った会社によると、去年10月から発注が増え始め、前年比およそ4倍と注文が急増しています。
このタイプで価格は77000円。「開口部」と呼ばれる住宅の窓や玄関は、外壁に比べて衝撃に弱いとされており、取り換えのニーズが高まっているということです。
(記者)「こちら(左)が一枚ガラス。そのガラスを養生テープで補強したのがこちら(中央)。こちら(右)は強度の強い『合わせガラス』。見た目はほぼ一緒、強度がどれほど違うのか実験してみます」
強風で物が飛んできたという設定で、それぞれのガラスを同じ力で叩いてみます。
(※ガラス施工技能士の資格を持った社員が安全に留意して実験しています。)
◆実験①一枚ガラス
◆実験②養生テープ
◆実験③特殊な樹脂を2枚のガラスで挟んだ「防災ガラス」
この「防災ガラス」、一枚ガラスのおよそ3倍と高価ですが、その強度に注目が集まり問い合わせが増えているといいます。
(小園硝子商会 小園洋平社長)「台風で飛来物が飛んできたときに、部屋の中に(飛来物が)入らないような防災ガラスにもなりますし、泥棒からのこじ開けにも強い防犯用のガラスとしても使われています」
一方、200種類あまりの防災グッズを扱うこちらの店では、去年の台風10号の備えで来店者が増えたことから、防災グッズの売り場を拡充しました。
(東急ハンズ鹿児島店 五十君浩さん)「コロナ禍ということで、水のいらないシャンプーとか、ボディソープなどの衛生商品、どれを選んでいいか分からない方は、防災セットを購入する方も多い」
事前の備えをしたうえで、いざというときどのように命を守るか?普段から意識して、身の危険を感じたら迷わず避難して欲しいと専門家は訴えます。
(九州大学 三谷泰浩教授)「コロナ感染を恐れるより、自分の命を守ることを第一優先にしてほしい。自分がどれだけリスクが高い場所にいて、自分はどれだけ災害に弱いのか強いのかを、きちんと理解しておくことが必要」
去年は、コロナ禍で避難所の収容定員を減らしたことなどもあり、避難所の確保が課題になりました。県は自治体と連携、指定避難所は去年より50か所増え1980か所になりました。
また、パソコンやスマホから閲覧できる「鹿児島県防災ウェブ」では、今年6月から「避難所検索」に住所などのキーワードを入れると、近くにある避難所とその混雑状況が表示されるように改修されました。
そして専門家は、各自治体などから配布されるハザードマップに、普段から目を通して備えることの重要性を強調します。
(九州大学 三谷泰浩教授)「自分がどういう危険性=リスクがあるかをハザードマップをベースに考えて欲しい。サポートする人がいれば、それだけリスクは下がる。例えば、高齢者でも、助けてくれる人がいればリスクは下がる。ハザードからリスクに置き換えて物事を考える週間をつけてほしい。」
台風による被害を最小限に抑えるため、必要な備えはなにか、本格的な台風シーズンを前に考えておくことが重要です。