桜島で大規模噴火想定の訓練 新たな取り組みも
鹿児島市の桜島で20日、大規模な噴火を想定した避難訓練が行われました。今回のテーマの一つが、「島外避難する住民の負担軽減」です。その背景には桜島が抱える課題がありました。
訓練は鹿児島市が毎年行っているもので、今年は市の職員や警察・消防、自衛隊などおよそ2000人が参加しました。桜島で大規模噴火の兆候がみられ、噴火警戒レベルが現在のレベル3からレベル4、その後、最高のレベル5へ引き上げられ、すべての住民、およそ3800人に避難指示が出された想定で行われました。
また、自力で避難できない住民の搬送や、観光客の避難の誘導や急病人が出た場合の海上自衛隊ヘリによる輸送手順も確認されました。
今回のテーマの一つが、住民や町内会の負担軽減です。
これまでの市の避難計画では、避難が完了した人を把握するため、家族構成などを書いた「避難用家族カード」を町内会長や公民館長が各世帯から回収していました。
しかし、カードは手渡しな上、最も住民の多い公民館では300世帯を超えるなど、効率の悪さを指摘する声もありました。
そこで今回登場したのが、消防が点検へ避難の完了を伝える「避難完了板」です。
反射材などで加工されたA4サイズの表示板で、避難の際に玄関先に掛けて家を出ることで、一目で避難状況が分かります。
また、これまでは避難の際、住民を1か所に集めていましたが、今回から消防が各世帯を回って「避難完了板」を確認するよう変更したため、住民がそれぞれの移動手段とタイミングで避難することで、迅速な避難が期待されています。
新たな取り組みに住民は。
(公民館長)「連絡の数が減るので、その分自分も動きやすかった。残留者の捜索をする消防団の人の機動性が出て短時間で出来て非常に良い」
(参加した住民)「良い試みだと思う。ただ、ネーミングには疑問があった。これから避難するのに完了かなと。」
鹿児島市が今回、住民の負担軽減に取り組む背景には、桜島の高齢化があります。
桜島で暮らす65歳以上の高齢者の割合は、10年前の2011年は39.5%でしたが、今年10月時点で半数を超える50.62%にまで上昇。高齢者のうち支援を必要とする人はおよそ1割で、避難を先導する町内会長や民生委員も高齢者がほとんどです。
(公民館長)「支援する人がお互いに高齢で、若い人が1人で何人も面倒みなくてはならないのが気がかり」
(下鶴市長)「(避難完了板は)町内会などの負担を減らして、しっかりと避難体制を構築する両立に向けて、意義深い取り組み。(訓練内容を)桜島全体で共有して、大規模噴火時でも犠牲者ゼロを目指す」
市は今後の訓練で「避難完了板」の対象を広げ、効果を検証したうえで全世帯での実施へ向けて避難計画を見直す方針です。