MBCラジオ

「#103 キレる老人」風の歳時記

「違う!それじゃない!」

「メンソールの味だと言っただろ」「わからんヤツだなぁ」

コンビニのレジカウンターで、70歳くらいかな、いいトシのオヤジが怒鳴り声をあげている。煙草の注文がうまく店員に伝わらないようだ。昔と違って100種類からの煙草が並べられていて、ネパール人だか、インドネシア人だかわからないけれど、若い外国人店員が戸惑うのも、無理はない。一つひとつの商品の下に番号が付けられているのだから、その番号を伝えればいいのに、爺さんは「その右の3番目」とか「違う!その隣の赤いやつ」とか言うのだから、片言の彼らは戸惑うばかりだ。最後は、舌打ちをして、煙草をひったくるように取って、出ていった。カウンターで並んで待っていた若者たちもあきれ顔だ。腐った魚を食べた後のような、何とも言えない不快感。こちらまで気分が悪くなる。

老境とは言わないが、「老い」の世界に少しずつ足を踏み入れて、つくづく思うことがある。ほぼ同世代の友人、同僚、親類、仲間と一緒に年齢を重ねてくると、どうも60歳前後を境に性格、言動が大きく二つの方向に変わっていくようだ。いや、社会心理学や発達心理学を学んだ訳でもないので、あくまで個人的な経験、実感に過ぎないのだが、一言で言えば「怒りっぽくなる人」と「いつもニコニコ、円満になる人」の二つのパターンだ。

心当たり、ありません?若い頃は、笑顔で何でも無理を聞いてくれて、周囲が心配する程お人よしの気さくないい人だった男性が、還暦を過ぎる頃から急に気難しくなり、怒るはスネるは、文句は多いは、すぐにキレるは…。逆に子供が高校を出る頃までは口うるさく、言い訳にも耳を貸さず、怒鳴り散らす典型的な頑固オヤジだった御仁が、まるで仏様のように丸くなり、愚痴ひとつ、小言の一つも言わなくなってしまったケース。こんな極端な例はともかくとして、父親でも夫でもいいけれど、トシを取るに従って怒りっぽくなるか、円満になるか、そのどちらかに分類できそうな気がする。

なぜ、人はこうなってしまうのか。最近はやりの人工知能AI君に尋ねてみた。

その答えは、まず、性格が変わってしまうことにはっきりした年齢の境目は見つかっていないが、「怒りっぽくなる人と、穏やかになる人とにはっきり分かれる」のだそうだ。怒りっぽくなる人の原因は、脳の機能が低下して感情をコントロールできなくなることや、耳が遠くなってイライラが募ったり、孤独感などのストレスが挙げられている。逆に穏やかになるのは人生経験を重ねてきて、自分の許容範囲が広がり、たいていのことは気にしなくなる。年をとって人とのつながりを大事にしようとし始める、などだ。

フムフムとAI君の回答を読みながら、まぁ、それくらいのことなら、君に頼まなくてもボクにも言える範囲だな、と思う。ボク流に考えれば、自分の周囲で起こったことを「受け入れようとするか」、それとも「外にぶつけようとするか」の違いなのだろう。

幸い、ボクの人生後半のモットーは「まぁ、いいかぁ」。鹿児島で言う「テゲテゲ」の神様の信者だから、頭にきて、切れまくって人生を終えることはなさそうだ。

この夏も暑くなりそうだ。これからの、すさまじい酷暑には、さすがの丸い僕も、切れてしまいそうだけど。

MBCラジオ『風の歳時記』
テーマは四季折々の花や樹、天候、世相、人情、街、時間(今昔)など森羅万象。
鹿児島在住のエッセイスト伊織圭(いおりけい)が独自の目線で描いたストーリーを、MBCアナウンサー美坂理恵の朗読でご紹介します。
金曜朝のちょっと落ち着く時間、ラジオから流れてくるエッセイを聴いて、あなたも癒されてみませんか。

読み手:美坂 理恵/エッセイ:伊織 圭

関連記事

  1. ガガブタ💚
  2. 547 45周年㊗鈴木雅之さん特集③ὗ…
  3. 亀田さん便り【ペルセウス座流星群】🌠
  4. 褒めて伸ばす?
  5. 第149回・第150回 鹿児島市広報戦略室 藤﨑様・岩城様・満留…
  6. 😎ジミちゃんチョイス(2025.11.10月-2…
  7. フェアリーペンギンさん今日のかごっま語(7/3月‐7金)
  8. 体調が一番!!

カテゴリー

最新の記事

  1. 8月 11日(火)のセットリスト
  2. 『城山スズメ』オリジナル【ワンハンドルバッグ】を1名様に!
  3. 初の夏のたるみずのデジタルスタンプラリー!
PAGE TOP